「浮雲」 1955年製作 日本
 

成瀬巳喜男監督の「乱れる」が面白く見れたので、成瀬監督の名作メロドラマと言われている「浮雲」を見た。林芙美子の同名小説を映画化した作品。

戦時中にインドシナで知り合った妻帯者である富岡(森雅之)とゆき子(高峰秀子)。二人が、終戦後に再び出会ったときは富岡は妻とも別れず、ゆき子は外国人の愛人となる。ゆき子は富岡の元を去るが付き合いを絶つことができず不倫の関係を続ける。

ゆき子は富岡と会うたびに彼の不誠実さをなじり、インドシナでの恋を懐かしむ。中絶までするが、男をあきらめきれずについには鹿児島県の屋久島までついていく。

富岡は自分にすがるゆき子をきっぱり絶つことがでないし、奥さんにも事情を隠し通す。また他の女にも目が移る。だから、映画監督の呉美保氏が「腹が立つ名言がたくさんあるんですよね。自分のことしか考えていない富岡を、毎回、煮えくり返る思いで見ています」と、言うのも納得。

評論家・脚本家の川本三郎氏は、「この映画の森雅之に驚くのは、女性に金を借りるシーン。自分の奥さんの葬式代がないから、愛人に金を貸してくれという」と苦笑した。

それでも川本氏は、「でも森雅之がやっているから許せちゃうんですね」とも話す。そして「森雅之はやさぐれてはいるけど、下品なところが全くない。崩れた気品があって、そこに魅力を感じるんでしょうね」とも語った。

富岡はゆき子に何度も自分と別れて新しい人生に踏み出すことを薦める。それでも、ゆき子はいっしょに行くという。それでいて、自分のほうにふりむいてはくれない事や、女好きな事、そして生活力のないことをつねになじって男にぶつけている。

これでは、男のほうもその場しのぎの、遊んで楽しいひと時を過ごせる女性のほうを選ぶわけだ。

『ダメな男から最後まで離れられなかったダメな女をしみじみと描いた戦後の物語』というのがぼくの感想。ユーモアが少なく、救いがなく途中で見ているのがしんどいとも感じた。その中でも、加藤大介演じるひょうひょうとした中年男の若い奥さん役の岡田茉莉子、彼女の綺麗さが、映画の花となっていた。

 

参照:成瀬巳喜男監督作「浮雲」は「腹立つ名言がたくさん」 呉美保&川本三郎が魅力語る