
「ザ・ホワイトタイガー」 2021年製作 インド・アメリカ合作 原題:The White Tiger
ラミン・バーラニ監督の「ザ・ホワイトタイガー」は、インドの貧困層に生まれた青年が、貧しい生活から抜けだしたいという野心を胸に裕福な一家の運転手となる。理不尽な現実に翻弄されながらも成り上がっていく姿を、ユーモアを交えつつ皮肉的に描いた社会派ドラマ。
タイトルのホワイトタイガーは、インドに生息するベンガルトラの白い毛色を指す。この白い体色は突然変異により、希少性が高く、神秘的な存在として扱われる。主人公のバルラムという少年は、すごく頭がいいので「ホワイトタイガー」と、呼ばれる。
しかし、インドの貧困層では目上の者に従うことを叩きこまれ、教育の機会も奪われた結果、貧困から抜け出す術も知らぬ支配者に従順な奴隷へと育てられる。そんな若者が這い上がるには、家族の掟にも逆らい、時には徹底した非情になるしかない。
主人公のバルラムが運転手として勤めるが、その主人が地主の次男のアショクというお坊ちゃん。経営を継ぐためにニューヨークへの留学から帰ってくる。奥さんはピンキーっていう名前でグラマラスで美人。
ピンキーが、知り合いと会話中にパルラムが紅茶を持ってきたときの態度を怒る。まず股間に手を置いていた動作を叱る。そして、「シャツも汚れている。パーンで口が臭いし。紅茶を下げて。」(パーンとは、インドの嗜好品で噛んで楽しむ。)
パルラムは、歯を磨くということを知らなかった。それからは、歯を磨くようになり、身なりにも気配りをするようになり、清潔さが感じられるようになる。
ピンキーはアショクとの結婚生活にピリオドを打つため、パルラムに空港までの運転をお願いする。その運転中に「鍵を探していたのよね。でも扉は開いている。」とのメッセージを彼に伝える。鍵とは貧困から抜け出す鍵か?また彼女は、封筒に彼の3か月分の給料に該当する金額を入れてパルラムに渡す。
その金額を得たことで、さらにお金を増やす事に頭を使い始める。そのような内面の改革と共に、映画は富める者と最下層の物乞いをするような人々を交互に映すので、なおさら、青年の貧困から抜け出したいという渇望が伝わってくる。
なかなか先の見えない、一筋縄ではいかない、実に面白いサクセスストーリーだった。