「乱れる」 1964年製作 日本

 

成瀬巳喜男監督の「乱れる」という映画は、義弟の告白により、揺れる女性の心の動きを見事に描いた恋愛ドラマ。

高峰秀子演じるヒロイン・礼子は、結婚して間もなく夫を戦争で亡くして、嫁ぎ先の店を18年にわたって切り盛りしてきた。加山雄三演じる義理の弟・幸司は、大学卒業後に就職した会社を辞め、仕事もせずに酒に溺れ、けんかに明け暮れていた。

冒頭BARにて、ホステスたちにゆで卵の大食い競争をさせて、お金を渡そうとするスーパー経営者達に幸司は喧嘩を売る。それがいかにも”善”対”悪”のわかりやすい日活アクション映画風の対決シーンに思え、『続けて見るのやめようかな?』と思った。

警察につかまった幸司を礼子が引き取りに行く。幸司と礼子の歩きながらのやり取りが楽しく、もう少し二人の様子を見たくなる。また、年の差はあきらかではあるけれど、幸司が礼子を好きなのではないかと思わせる。

映画の中盤で幸司が礼子に「姉さんが好きだからここに居るんだ」と、告白する。その告白に礼子は後で「女だからそれは嬉しかったわよ」と、告げる。

それなら、二人いっしょになればいいのに、と思うがその時代には年の差もあり簡単にはいかないのであろう。やきもきさせる二人のやり取りは続く。

家を出ていくことに決めた礼子は義母の見送りで汽車に乗るが、そこに幸司が現れ「送っていくよ」と言う。

礼子は発作的に途中の駅で幸司を誘って降り、二人で銀山温泉で旅館に入る。幸司は礼子を求め口づけしようとする。礼子は思わず身を引いて、「堪忍して」と言って泣き出す。拒絶された幸司はやけになって外に飛び出す。礼子の不安で慌てた様子が映し出される。

翌朝、窓の外を見た礼子に驚きの展開が。『そんな終わり方になるの?』とあっけにとられたまま、映画は終わる。

色々な映像のテクニックでみせているのが、成瀬巳喜男監督の映画なのであろうけど、そんな難しいことは置いといて、この映画は今の映画にはない、しっとりと落ち着かせる空気感を持っていてとても良かった。高峰秀子の夫である松山善三が脚本を務めた物語も面白かったし、また他の成瀬監督の映画が見たいと思った。