
「ロストケア」 2023年製作 日本
映画「怒り」の松山ケンイチの演技があまりによかったので、松山ケンイチと長澤まさみが主演の前田哲監督「ロストケア」を見た。
「ロストケア」は、42人もの高齢者を殺害した殺人犯として逮捕された介護士・斯波宗典(松山ケンイチ)と、検事・大友秀美(長澤まさみ)の対峙を描いた社会派サスペンス。
犯人を捜してその攻防を描く映画かなと思ったが、犯人はすぐにわかる。犯人を追う映画ではなく、介護に関して、また”老いる”という事に関して改めて考えさせる映画だ。
松山ケンイチ演じる介護士は、担当した老人が亡くなりお通夜に出る。その老人の娘を前に、お悔やみの言葉を投げかける。
「よく頑張られましたね。今まで本当にご苦労様でした。」
と、頭を下げる。
「娘さんがいつもそばに居てお世話されて、お母さまはとてもお幸せだったと思います。よく”赤トンボ”の歌、歌ってあげていらっしゃいましたよね。それを聞いたときのお母さまの幸せそうな笑顔。ぼくは忘れません。」
娘さんは「ありがとうございます」と、涙を流しお礼を言う。その場面は見ているこちらの涙も誘う、心に残る場面であった。
ぼくは60代半ばを過ぎて、父は亡くなり母親がもうすぐ90になろうとしている。だから、映画のテーマ―としていることは他人事ではない。
いまのところ母は足は不自由になったけれど、頭もしっかりしているし元気に会話をしているので、他の人よりはめぐまれている状況だ。
それでも、自分自身を含めて楽観的な気持ちで老いを考えることはできない。日々、今までできていたことが時間の経過により、徐々にできなくなることが老いの現実だ。
映画では問いかける。老人の介護に、家族が多大な負担を受けている。だから『殺害して本人も家族も楽にしてあげることは、”救い”ではないですか?』と。その殺人犯の意見に、反論する長澤まさみ演じる検事の対話が長い時間続く。
外部の人間が、家族を殺害することを正当化できるわけがないのは当たり前の事だ。けれど、この先も続くであろう「生きる事と老い」、もしくは「介護の問題」に映画の中に答えを探しても結論は簡単には見つからない。