
「まったく同じ3人の他人」2018年製作 アメリカ 原題:Three Identical Strangers
1980年、ボビーはニューヨークの大学に入学し、その初日に大勢の生徒達が自分に話しかけるのを不思議に思った。知人のように挨拶をしてエディと呼んできた。
エディの友人に「君は養子かい?エディもそうなんだ」と言われ、ボビーはエディに電話をかけ、車で彼に会いに行く。目の前に自分とそっくりの男が出てくる。二人は、知らされずに別々の家族に養子として出された事を知る。こうしてボビーとエディは
19年ぶりに再会を果たし、奇跡の双子として新聞にも取り上げられる。
二人の再会の記事を読んだデヴィッドが二人に連絡を取った。同様に彼も養子に出されていたので、三つ子であったことが判明する。三人は再会を大いに喜び、テレビ番組にも出演して、人気者となる。彼らの三家族も含めて、笑顔で交流を楽しんだ。
テレビ番組でも、三人が共通であることの話題が取り上げられる。三人とも、同じタバコの銘柄を吸い、レスリングをやり、同じ色を好む。そして客席から質問が。「女性の好みは同じ?」三人が同時に「そうです」と、答えて会場は笑いに包まれる。
三人は共同で飲食店を開く。お店に行けば話題の三つ子に会えるということで、店は大繁盛する。三人はそれぞれ結婚する。その後も三つ子同志の交流は続く。
なぜ、それぞれの家族に三つ子であったことが知らされなかったのか。その理由を調べていく。すると、養子縁組機関が人体実験の組織と手を組んでいたことが明らかになる。家族にも養子にも知らされずに、実験は進められていた。
ティム・ウォードル監督の「まったく同じ三人の他人」は、別々の家庭に養子に出された三つ子の秘密を追い求めたドキュメンタリー映画だ。当映画は、サンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞している。
前半の楽し気な笑顔の三人とは別に、後半は思いがけない展開となる。年月が過ぎてから三人が出た番組では、若い頃とは違い、それぞれが沈んだ元気のない表情に見える。過ぎた年月の中で何が変わったのか。やがてエディは、鬱で自殺をする。
彼ら三人に対しての、ユダヤ人精神科医が行った実験のデーターは公表されている。
同じDNAを持つ三人が、労働者階級、中流階級、富裕層のそれぞれの家庭の子供になったとの事で、その成長の違いにより人間は遺伝によって決まるのか、育ち(環境)によって決まるのかが分かるはず、という仮説のもとに実験は行われた。
人間の本質的な事をテストするために、実験者が環境を設定してテストを行うと、そこに思いがけない悲劇が生じるという事が、映画『es[エス]』で描かれていた。同様の危険性と非人道的な実験をこの映画にも感じた。