「アイズ・オン・ユー」2023年製作 アメリカ 原題:Woman of the Hour

主演だけではなく監督もすることになったアナ・ケンドリックの「アイズ・オン・ユー」の、映画の内容の説明文を読んで、これは面白そうだと思った。

1978年、俳優志願の女性シェリルが、テレビの人気バラエティ番組「ザ・デートゲーム」に出演した。その番組では3人の男性の中から意中の人を選ぶという番組だったが、女性が選んだ男性は実は多くの女性を手にかけてきた連続殺人犯であったという。

連続殺人鬼という正体を隠してテレビのデート番組に出演した実在の人物ロドニー・アルカラをモデルに描いたサスペンススリラー。

見る前に以下の予想をした。
『主人公の女性シェリルがテレビ番組がきっかけで連続殺人鬼と知らずにつき合って、男の正体を知った時にピンチに陥るところが、物語のクライマックスになるのだろう』
でもそれはいい意味で裏切られた。

シェリルが「ザ・デートゲーム」の本番前に司会者に言われたことは、「君にお願いがある。君は聡明な女性だ。でもステージ上では賢くならなくていい。男たちが怖がる。君はただ笑っていればいい」。

番組が始まるとシェリルは、用意された質問項目を手にもち、その質問を出演者の男性3人に投げかけ、その面白味のない回答にあいまいな笑顔を浮かべていた。

シェリルはしだいに、番組での男性の回答と自分の質問に物足りなさを覚えて、番組を無視して独自の質問をなげかける。
「アインシュタインは”火の上では1時間に感じ美人の隣では1分に感じる”と。彼の特殊相対性理論ね。あなたの場合は」
「食事の見返りは何を期待する」
「女性の存在意義は 女性は何のためにいるの?」
「他の2人と一緒にいましたね。2人の言動で一番不快だったことは何?」
番組の司会者は自分の番組で好きにやられて顔を曇らせる。

質問に関して答える中身のない男と、何かセンスを感じさせる殺人鬼・ロドニーの回答の対比が面白かった。当然、比較すればシェリルは殺人鬼の方を選択してしまう。この場面が物語の一番興味を惹かれたところだった。

別のシーンでの殺人鬼・ロドニーのエピソード。

10代の家出少女に男はカメラを持って近づく。写真を撮りながら、「キレイだよ。君は魅力的だ」「コンテスト用の被写体を探していた。君なら完璧だ」

少女も気を許して、車でモデルとして撮影する場所へ移動する。男は見渡す限り何もない自然の中の岩の上で写真を撮り始める。
そして男は「空を見上げて」と、ポーズを要求し、少女がまぶしそうに目を閉じかけ「摂れた? ロドニー?」と、男の名を呼びかけた瞬間、いきなり少女を岩の上から突き落とす。

少女はその後、気絶状態から目が覚める。顔と唇に出血した血がこぼりついている。手と足にはロープが巻かれている。殺人鬼は自分のした事に後悔しているかのようにうずくまって嗚咽している。

少女は殺人鬼に声を掛ける。

「ねえ。大丈夫?昨夜はいろいろあったけど頼みがあるの。この事は誰にも言わないでちょうだい。お願い。」「恥ずかしい思いをしたくない。人は批判的でしょ。ありがとう。じゃあ家に帰ろう」

男はゆっくり上体を起こし「分かった」と、言う。

「外してくれる?結び方を知っているのね。ボーイスカウト?」少女はロープをはずしてもらい、殺人鬼と車に戻る。

この思いがけない展開により、当映画は忘れ難い1本となった。