
お笑いタレントのバカリズムが脚本も書いていて、評判のいいドラマを作っていることは知っていた。でも、こんなに不思議で魅力的な作品を作っていた事に驚かされたのが「ホットスポット」。
同作は、山梨県のビジネスホテルに勤めるシングルマザー清美が、同僚の高橋から「実はオレ、宇宙人なのネ」と明かされ、奇妙な事件にまきこまれるSFコメディ。
宇宙人役はお笑いトリオ「東京03」の角田晃広(かくた あきひろ)が演じている。その宇宙人らしくない風貌と、逆に人間くさいグチっぽい口調や温泉で失われたパワーを回復するという奇妙なキャラクターが癖になる面白さ。
まずはドラマの舞台でも、驚かされる。富士山がドラマの風景として何度もでてくる。富士山は日本のみならず、外国のファンも多くてとても人気の山だけど、ぼくが思うに『わざわざ日本に来なくても外国にも見応えのある山はたくさんあるだろうに』と考えていた。
でも、ドラマでドーンと富士山を持ってこられると、風景に人工的にはめこんでいるかのような違和感と圧迫感があって、そこがドラマのSF調に見事に一致している。富士山も出演者の一人のような存在感を感じさせる。
そしてドラマの舞台はビジネスホテルなのだが、これが従業員だから語れる細かな話が会話の中にうまく入り込んでいる。コメディでありながら、現実味がほどよく加味されているので会話が生き生きと感じる。
また、会話の場面の設定もうまさを感じさせた。
清美はフロント業務を行いつつ、同僚の由美から話しかけられる。「女性のお客さんで角部屋がイヤだって人が居て、ホテルの角部屋には霊がいるらしくって」そこまで話すと、フロントを女性客が通りすぎ「おはようございます。行ってらっしゃいませ」と、二人で見送る。
その後で、由美は別の客に「チェックアウトでよろしいですか?」と、業務をこなす。客が去った後で清美は「そうしたら?」と、話の続きを促す。
「霊がいないか確認してほしいって言われて・・・・」と、少し話すとまた次のお客が来たり、電話で話が中断される。その後で清美は再度「それでぇ?」と、聞くと「何でしたっけ?」と、話しているほうも中断された話を忘れている。その時にこちらの耳も話の続きを聞きたくなってしまい、まるでその会話に参加しているかのような気持になるのが楽しい。
ところで、この作品は第123回ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞でバカリズムが脚本賞を受賞した。
受賞を受けてバカリズムは、「この受賞は、市川実日子(いちかわ みかこ)さんをはじめとするキャストとスタッフの皆さんのおかげです。あとちょっとだけ僕の才能のおかげもあるかな (笑)」と冗談めかしてチームに感謝を伝えたという。
主演した市川実日子が主演女優賞のほか、宇宙人・高橋孝介役の角田晃広が助演男優賞を受賞した。
参照:<ドラマアカデミー賞>脚本賞は「ホットスポット」バカリズム