「ドント・ブリーズ」のスティーブン・ラングが青年を追い詰める狂気の老人を熱演したスリラー。

森で迷ってしまった青年のハイカーが、助けを求めて山小屋のドアを叩く。ドアが開いたとたん、その山小屋の住人の老人がいきなり猟銃を突きつけ、「お前は殺人鬼かもしれない」と叫んで、信用しようとしない。青年と老人の緊迫感が漂う中で、やがて老人は過去に尋ねてきた男の話の顛末を語り始める。それは老人の狂気と残酷さを感じさせる話だった。

この映画が始まってすぐに感心したことは、深い森の奥に隠遁生活を送っている老人役のスティーブン・ラングのうまさ。

映画の舞台は山小屋の中だけという限られた空間。それも平屋で狭く息苦しい場所に老人と尋ねた青年ハイカーの二人がいるだけ。

それでも、面白さが途切れないのは、スティーブン・ラングの次にどんな行動に移るのか、どんな言葉を発するのか予想のできない狂気を含んだ異様な人間性を演じきったところにある。脚本の上手さもあるだろうけど、スティーブン・ラングの演技力はただものではない。

物語の始めに、老人は青年が訪ねてくる前に、飼っていた犬のラスカルが居なくなった事に腹をたてている。朝から酒を飲みながら独り言を言っている。

「恩をあだで返す気か」「だが覚悟しろ。痛い目に合うぞ。逃げた代償はデカイ。俺がこの手で殺してやる」「ストーブに投げ込み黒焦げにして食ってやるんだ!骨までしゃぶって最後は酒で流し込む。遺灰には小便をかけてやろう」

もう、映画が始まってすぐに、この老人の精神状態が普通ではないことが伝わってくる。朝酒を飲んで逃げた犬への恨みつらみをつぶやいているところに、青年のハイカーが訪ねてくる。青年はすぐに小屋に入った事を後悔することになる。

この映画は実は評価が低い。指摘されるのは、後半の話の展開のまずさ。映画.comでは点数に直せば平均が50点という低ささだ。

確かにもう少し後半はなんとかなりそうにも思える。しかしぼくとしては、スティーブン・ラングの演技を充分に堪能できたし、小屋一つの舞台でも、脚本と役者が揃えばこんなに緊迫感のある面白い映画ができるのだという一つの発見があった。観る価値があった映画の一本としてカウントされた。