事件が起こったのは6年前の2018年。

大阪地検トップである検事正だった北川健太郎被告(65)は大阪市内の官舎で酒に酔って抵抗できない状態の当時の部下の女性検事に性的暴行をしたとして、準強制性交の罪に問われている。

● 被害申告なんてしなければよかった
10月に大阪地裁で開かれた初公判で、北川被告は「公訴事実を認めて、争うことはしません」「深刻な被害を与えたことを深く反省し、謝罪したい」などと証言。このまま有罪となる見込みだったが、今月10日に予定されていた第2回公判は、取り消された。

その理由は、裁判官と検察官を前にして北川被告側は「無罪を主張する」と、突然の方針転換を示したからだ。

性的暴行について北川被告が一転して無罪の主張するなか、「どこまでなぶり殺しにすれば気が済むのか」と、被害女性が涙ながらに以下のように訴えた。

 「きのう元検事正、北川健太郎被告が自身が犯した準強制性交等の罪について否認に転じ、無罪を主張していることを知り、絶句し泣き崩れました。今の率直な気持ちを申し上げると、被害申告なんてしなければよかった。

痛みをこらえながら自分一人で抱えて我慢すればよかった。そうすればこんなにまで苦しい思いをさせられることもなかった。家族を苦しめることもなかった。検事としてのキャリアを失わずに済んだ。一生懸命、仕事をしている職員に悲しい思いをさせることもなかった」

声を上げられない被害者の力になりたくて検事になった。その彼女が訴えた。
「被害申告したせいで私は自分の恥をさらしただけで、大切なものをすべて失ってしまった。組織のトップから受けた性犯罪被害を訴えることが、これほど恐ろしく、これほどまでにひどく傷付けられ続けると思いもしなかった」

この会見はテレビニュースにもなった。音声への加工はしなくてよい旨を報道陣に話して、覚悟を決めて臨んだ様子がうかがえた。しかしテレビニュースで切り取られた”泣き崩れるかのような発言の内容”には、検事という職業から考えてもどうなのか?と感じた。

『今の率直な気持ちを申し上げると、被害申告なんてしなければよかった。』これは、これから性被害の申告しようとする人の気持ちをくじかねない発言に思える。『痛みをこらえながら自分一人で抱えて我慢すればよかった。』という発言にもそれは言えると思う。テレビニュースの会見の切り取り方にも問題があると思うし、彼女の会見内容の全体を取り上げる必要があったのではないか。

● 疲れ果てるまで3時間近くにわたって
ところで、その6年前の事件とはどのような内容だったのか・

2018年9月12日、被害を訴えた女性検事は、北川被告の検事正昇進祝いで開かれた懇親会に同僚たちと参加。彼女は日頃の激務に加えて家事や育児の疲労の影響で、図らずもテーブルに伏すほど泥酔してしまう。

宴席終了後、北川被告は酩酊した彼女をタクシーに乗せ、自らの住む大阪市内の官舎へ連れ込み暴行に及んだ。その時の様子を、会見で被害女性はこう語った。

「被告人は抗拒不能の状態にあった私の服や下着を脱がせて、全裸にした上で私に覆いかぶさり、避妊具を用いず性交に及びました。(中略)上司として尊敬していた検事正の被告人から性交されているという予想外の事態に直面して、恐怖して驚愕(きょうがく)して絶望して凍りつきました。私は抵抗すれば被告人から、自分の名誉などを守るために殺されると強く恐れました」

なんとか彼女は声を振り絞り「夫が心配しているので帰りたい」と懇願したが、
「しかし、被告人はそれを無視して『これでお前も俺の女だ』などと言って、性交を続けました」(被害女性)

行為が中断した隙に、彼女は這って下着を身に着ける。しかし、北川被告は再び下着を脱がせて布団に連れ戻し、口淫まで求めるなど、自らが疲れ果てるまで3時間近くにわたって、執拗(しつよう)にコトに及んだという。

翌日未明ようやく解放され、自宅に戻ることができた女性だが、被害を上級官庁に申告するまで、相当な葛藤があったとして、以下のように語っている。

「被害から6年間、本当に苦しんできました。ほぼ誰にも言えず、苦しんできた期間が長かった。強い恐怖や孤独、事件が闇に葬られるかもしれないと、不安も大きかった」

「すぐに被害申告できなかったのは、被告人から『公にすれば(自分が)死ぬ』『検察が機能しなくなり、検察職員に迷惑がかかる』と脅され、口止めをされ、懸命に仕事をしているたくさんの職員に迷惑をかけられない、検察を守らなければならないと思ったからです」

彼女は懸命に日々の仕事をこなすことで事件を忘れようと努めたが、PTSDを発症し肺炎を患うなど体調が悪化。そんな彼女に対して、北川被告は「時効がくるまで食事をごちそうする」などと言い、「(自分が)退職しても訴えないか?」と確認した上で2019年に退職。多額の退職金を得て弁護士に転身後は、神戸大非常勤理事やリーガロイヤルホテルの運営会社の社外監査役などにも就き、悠々自適の生活を送った。

また、女性検事は北川被告側から慰謝料の1000万円を受け取ったが、事件から6年、意を決して慰謝料を返金し、被害を訴えた。

● チューしてハグして と手を広げる
あまりに無反省な北川被告の態度に、被害女性は告発を決意。今年4月に正式に上級庁へ被害を申告して事件化されたわけだが、職場でさらなる裏切りに遭っていた。

10月25日の初公判当日に自ら開いた会見で彼女が訴えたのは、事件の発端となった宴席に同席した女性副検事が、内偵捜査の段階で北川被告側に捜査情報を漏洩して、不利な供述をさせないよう尽力していた疑惑だ。

先の会見で被害女性は、

「(女性副検事は)検察庁職員やOBに対して、被害者が私であることを言った上で、事件当時、性交に同意していたと思う、PTSDの症状も詐病ではないか、金目当ての虚偽告訴ではないかという趣旨の、私を侮辱し、誹謗中傷する虚偽の内容を故意に吹聴していたことが分かりました。

さらにうそは検察庁内に広く伝わり、私が信頼していた上級庁の検事までもが、証拠関係も知らないのに、被害者を誹謗中傷し、被告人を庇うような発言をしていた」

「副検事は、私が被告(北川健太郎)のことをとても好きで、以前から“被告人と飲み会をしたい”と、ずっとしつこく言っていたので飲み会をセッティングしてあげた、私は飲み会の最中も被告人に対して“ずっと前から被告人のことが好きだ”“チューして”“ハグして”と手を広げるなど、好意を示していたと供述していました」

さらに副検事は、懇親会終了後、女性検事が率先して北川被告を官舎へタクシーで送り届けたと供述。北川被告や女性検事を含めて懇親会の参加者6名中、副検事だけが酒を飲まないので、“自分の記憶が最も正確だ”とアピールしていたという。

「私が被告人(北川健太郎)のことを好きで、飲み会をセッティングしてもらったというのは明らかな虚偽であり、懇親会での発言も他の同席者が否定してくれて、それらの事実もないと検察庁は認定しています」(女性検事)

● 同意があったと思っていました
一方、一転して無罪を表明した北川被告の弁護人である中村和洋弁護士は、こう説明している。「北川さんには、女性が抵抗できない状態だったとの認識はなく、同意があったと思っていました」

ならば、なぜ北川被告は初公判で起訴事実を認め、謝罪まで口にしたのか。中村弁護士いわく、

「(北川被告には)事件関係者を含め、検察庁にこれ以上の迷惑をかけたくないという思いがあった。しかし、その後の事件関係者に生じた情報漏洩等に係わるあらぬ疑いや、また検察庁に対する組織批判により、北川さんはこのような方針が間違っていたのではないかと悩み、自らの記憶と認識に従って主張することにしたのです」

古巣に迷惑をかけないよう裁判で争わないと決めたのに、検察への思わぬ批判が起きたから無罪主張に転じるという理屈なのだ。これに対して11日、女性検事が怒りの声を上げた。

「元検事正が主張を二転三転させて被害者を翻弄(ほんろう)し、世に蔓延(まんえん)する同意があったと思っていたなどという姑息(こそく)な主張をして無罪を争うことが私だけでなく、今まさに性犯罪被害で苦しんでいる人々をどれほどの恐怖や絶望に陥れ、被害申告することを恐れさせているか。

被告人は私をどこまで愚弄(ぐろう)し、なぶり殺しにすれば気が済むのでしょう。被告人がどのように主張しようが真実は一つです。司法の正義を信じます」

北川健太郎被告も悪い奴だが、彼に協力しているとみられる女性副検事も相当なクセモノだ。副検事に関しては、週刊新潮がまた新たな取材記事を掲載するようだ。また、北川被告が言った言葉の『これでお前も俺の女だ』には、「その顔でよく言うわ!」と苦笑してしまうが、『お前も』と言っていることからすると、今回の件だけではなく被害者は他にもいたと思える。さて苦肉の策の「無罪主張」が通用するのか否か・・・・・・。

 

参照:「帰りたいと懇願する被害女性に行為を続けた」 大阪地検元検事正「一転、無罪を主張」の背景に「ホラ吹き女性副検事」の存在が
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