「胸騒ぎ」 2022年製作 デンマーク・オランダ合作 原題:Gaesterne

 

胸クソ映画として現在、有名になっているクリスチャン・タフドルップ監督の「胸騒ぎ」という映画を池袋で観てきた。

デンマーク人の家族が旅先でオランダ人の夫妻と知り合い、旅から帰って数週間後、家に遊びに来ないかとの招待。喜んで家族で出かけると、何かが変。居心地の悪さと恐怖を感じながらも相手の心象を害するのを気にしているうちに、気が付けば自分の家に戻ることができない状態に。

映画で、一番損したと思うのは、物語が退屈すぎたり体調が悪すぎて映画館で眠ってしまった時。結果、椅子で眠った時間にお金を払ったことになるわけで、こんなばからしい事はない。その意味で言うと、「胸騒ぎ」は、物語が進むにつれて不安な空気と違和感を画面から強烈に感じる事が強まってくるので退屈とは無縁の映画。

ホラー映画はスッキリ気持ちよく見終わる映画は、ほとんんどないのは了解済み、でもこんなに後味の悪い映画もひさびさの経験。特に幼い子供にたいする、ある虐待のひどいシーン。最悪な映画という評判を聞きながら、この作品を選択してしまった。その選択の罪を受けるがごとく、見終わった後に実に重苦しい気分になった。その事を予想したうえで、お金を払って観に行っている。思えば、心とは不思議なものだ。

やはり思い出すのは2人組の男のうちの1人が「卵がなくなったので譲ってほしい」といいながら家のなかに入り込んで、家族を皆殺しにしていく希望のまったくない物語の「ファニーゲーム」(1997)。

この映画との比較に関して監督はこのように違いを述べている。

「『ファニーゲーム』では訪問者がベルを鳴らし、休暇を過ごしている家族を閉じ込めて拷問します。一方で『胸騒ぎ』の家族には施錠されたドアはなく、ロープで縛られてもおらず、いつでも逃げることができます。ただ去ることもできたのに、そうしません。」

この映画のなかで、こんなセリフが出てくる。「君が差し出したんだ」。監督は、このセリフに関して以下のように説明している。

「彼らにとってはこれは『どこまでやれば主人公のビャアンたちは私たちを止めるのか』というテストであり、ゲームなのです。」

日常の中でぼくが嫌いなのは、歯を磨く歯ブラシの音。それがまたこの映画で微妙な場面でシャカシャカシャカシャカ、けっこう長い間続く。この嫌な音の効果もぼくには刺さった。

参照:受容の限界を見誤った先の最悪な未来──ダークな風刺が効くホラー『胸騒ぎ』監督に聞く