5月8日の3時過ぎに、西新宿のタワーマンション前で起きた刺殺事件は、51歳の男性が25歳の女性を殺害した。

男は、およそ2000万円のお金を結婚資金として渡したが、お金を工面した途端に女性にストーカーとして110番通報され、返してもらえなかった。



マンション前で和久井学容疑者(51)が帰宅した平澤俊乃さん(25)を果物ナイフで襲い、刺殺した。犯行は壮絶なものだった。

「刺し傷は首から腹部にかけて数十ヵ所に及び、逃げる平澤さんを追いかけ、背中も刺している。警察は容疑を殺人に切り替え、二人の関係を軸に調べを進める方針です」(社会部記者)

● お金を騙し取ったのが一番悪い
この事件に関して、「5ch掲示板」では、このような意見が。

そもそも女が結婚詐欺でお金を騙し取ったのが一番悪い

男性は「お金を返してくれ」と言ってただけ
それなのにストーカー扱いをされて逮捕されちゃった
警察も弁護士も助けてくれない
「もうヤるしかない」と追い詰められた結果がこれ
今の日本は完全に女尊男卑の国だよ

一番、悪いのは言うまでもなく待ち伏せして犯行に及んだ和久井学容疑者だ。

でも、ぼくも最初はここまで極端ではないにしても、「女性が結婚詐欺でお金を騙し取った事が事件の根本原因では」というような考え方に傾きつつあった。しかし事件の内容を調べていくと、この発想は間違っていることに気付かされる。また、単純に誰が悪いと決めつけられるものでもない。

和久井は警察の調べに「結婚を前提に金を貸したが返ってこなかった」という趣旨の供述をしている。

川崎市の実家で両親と三人暮らしの和久井は、高校卒業後は職を転々とし、事件直前までウーバーイーツの配達員をしていた。

「プライベートではバツ1で、前妻はキャバクラに勤務していた。消費者金融に七百万円の借金をしていたことも判明している」(捜査関係者)

● 結婚するかもしれない
和久井の父親は、FRIDAYデジタルの取材に対してこう語った。

「3~4年前かな。ある日突然、『秋に家を出るから』って言うから、『どうして』って聞いたら『結婚するかもしれない』って。その後に車を売ったんだよね。結婚を前提に資金を作るために車を売った。(高級車を買えたのは)コツコツ貯金して贅沢してなかったから。給料は車とバイクにつぎ込んでいた。女の子(平澤さん)から『本当に結婚する気があるのなら、車とバイクを売ってお金にして』って言われたみたい。貯金を含め、銀行からお金を借りて、さらに足して渡していた。うちの息子はストーカーじゃないからね」

「バイクと車を売って得たお金を渡してしばらくすると、彼女の態度が豹変して冷たくなったみたい。トータルで2000~3000万円ぐらいじゃない。息子に『彼女はお金目当てでしょ』って言ったんだけど、本気にしないの。聞く耳を持たない。『大人しくて、かわいくて、やさしくていい子なんだよ』だって。家に連れてきたことはないですが。食事に行ったり、デートしたりしていたみたい。うちの(かみさん)を含め、(交際には)みんな反対ですよ」

2022年5月には、和久井は平澤さんの自宅前などで待ち伏せしたなどとして、ストーカー規制法に基づき書面警告を受けて逮捕されている。以降しばらくの間、平澤さんへのストーカー行為はなくなっていたが、別の女性にストーカー行為をしていたことが『FRIDAYデジタル』の取材によって判明している。

「’23年~’24年にかけて、和久井容疑者のストーカー行為に関する相談が少なくとも6件、警察に寄せられているんです。平澤さんとは別の女性で、被害者は複数います。付きまとったり待ち伏せするというものではなく、手紙を何度も送るなどの迷惑行為だったようです。しつこいアプローチがあったのか、なかには同一の女性が、2度にわたって警察に相談に訪れていた事案もあるそうです」(捜査関係者)

つまり、平澤さんが結婚詐欺でお金を騙し取った以前に、他の女性にも同様の行為に及んでいるということは、元々の和久井の行動がストーカー体質であることを物語っている。

また、父親は平澤さんと息子が「食事に行ったり、デートしたりしていたみたい」と、言っているが警察の調べでは『2人が交際していた形跡はない』と判断し、和久井が一方的に好意を募らせていた可能性があるとみて、調べている。

● 4か月目でやっとNo.1
和久井と平澤さんが知り合ったのは6年前のこと。高校卒業後、平澤さんは、新潟県上越市から上京。仕事の傍ら、複数のSNSでライブ配信を定期的に行っており、和久井がそのライブに参加した。

「平澤さんのライブ配信は雑談がメイン。和久井さんは配信の”常連”で、彼女に対する好意が見え見えでした。見てもわかるくらい『好き好き』という感じ」(ライブ配信の視聴者)

そんな平澤さんは、約四年前から本格的に夜の世界に足を踏み入れるようになる。

「銀座のキャバクラに入店した彼女の評判はすこぶる高く、何度もトップを取って、その表彰状を自宅に飾っていました」(平澤さんの元同僚)

彼女は自身のインスタで当時を振り返っている。

<毎日出勤して指名のお客さん被ったとしてもフリーが来店したら必ず席付いてお客様ノートと来客、売上を毎日欠かさず手帳に書いてお客さんゼロスタートから4か月目でやっとNo.1になれて辞めるまでずっとその地位を貫いて今の私がいる>

和久井のストーカー気質が表面化したのは、彼女が上野のガールズバーに勤め出してからのこと。

「和久井さんは銀座のお店は値段が高くて行けなかったみたいですが、彼女が拠点を上野に移してからは、リアルでも常連として頻繁に顔を出すようになりました」(平澤さんの元同僚)

知り合って間もなく、和久井は彼女の自宅を特定していた。

「ライブ配信中に平澤さんが発した『今日は家の近くの神社に提灯が並んでいた』という言葉から自宅を推測。当時アマゾンの配達員をしていた和久井さんは土地勘を駆使して地域を特定し、『〇〇神社?」と本人に確認のDMを入れているのです」(ライブ配信の視聴者)

平澤さんが震える声でAさんに電話したのは2021年冬のこと、上野のガールズバーを離れ、自信がオーナーのキャバクラを開業した直後のことだった。
「玄関のドアノブにシャインマスカットがぶら下がってたんだけど、これって絶対、和久井だよね。めっちゃこわいんだけど・・・・・・」



● 一千万円のシャンパンタワー
エスカレートする和久井の行動を不安視しながらも、オープンしたキャバクラはかなりの盛況ぶりだった。開店祝いの花も贈った和久井は、平澤さんにこんな提案をしている。
「一千万円のシャンパンタワーをやろうよ」

前出のAさんが明かす。

「和久井がその直前に愛車とバイクを売ったのも、シャンパンタワーでいい恰好をしたかったから。和久井は警察に『お金を渡した』と供述しているようですが、すべて飲み代で、彼女に返す義務はないんです」

異常な愛情を一方的に募らせる和久井に対し、平澤さんは周囲に不安を漏らしていた。2022年3月のインスタライブでは次のように話している。

「(和久井に付く)ヘルプの子も可哀想だったから、1回ヘルプの子を抜いて、男性スタッフを付けた。そしたらそのお客さん(和久井)は真顔で『(平澤さんを)もう殺していいですか?』って言っていたみたいで」

「スタッフが『殺しても何のメリットもないし何も得るものないですよ』と、答えるとお客さん(和久井)は『僕には失うものは何もないんで』。スタッフは『イヤ、自由がなくなりますよ』」

「ストーカーのお客さんって結構いるんだけど、その人だけは匂いが違うんだよね。かっこつけで言っている『殺してやる』じゃなくて本当に人を殺す感じなの。それはもう断言できる」

視聴者から「普通、そういう頭のおかしいお客さんって切るのに、切らない理由は何ですか?」との質問に、平澤さんは次のように回答している。

「(和久井は)普通にいわば“きちがい”だから」平澤さんは「あたた・・・・・・!」と言って笑う。「精神的苦痛を与えられているわけだからさ。お店に入ったらセット料金が発生するのと同じで、迷惑料って感じかな。だから、普通はみんな切ると思うんだけど、私はそこで切らないかな。ここまで自分を精神的に追いやって傷つけたんだから、迷惑料はいただかないと、みたいな。自分がえぐられたぶん、倍でもう搾り取るみたいな感じ。」

「その人に関しては、もう命を賭けてやってる。もともと何だろう、平気で人を殺すような人なんだろうなと思うし。でも命賭けてやって。それでもその人にどれだけ傷つけられたかって考えると、命を賭けてその人には――」

● アイドルの出待ちみたいな
その翌月、和久井は自宅マンション前で平澤さんを待ち伏せするようになる。「週刊文春」取材班は、彼女が知人に送ったLINEを入手。その文面からは、ストーカー男への恐怖心が伝わってくる。

〈まって家の前に居るんだけど〉

〈和久井が家の下にいる〉

〈どうにかして〉

〈まだ家の前にいる〉

ストーカー行為を咎められた和久井は平澤さんに携帯メッセージで次のように釈明している。
〈もしマンションから出てきたら一目見たかっただけです。アイドルの出待ちみたいな感じです。●●●(平澤さんの源氏名)さんは俺のアイドルだから〉

2022年5月25日、ストーカー規制法違反の容疑で警視庁に逮捕された和久井は、その後、平澤さんに接触することはなかった。ところが――。約2年後となる5月8日、再び平澤さんの目の前に姿を現した和久井の目には、明らかな殺意が宿っていた。

参照:タワマン刺殺女性「命を賭けて金を搾り取る」証拠動画が物議
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