チャールズ・マンソン率いるマンソンファミリーと言えば、映画監督ロマン・ポランスキーの妻で妊娠中だった奥さんのシャロン・テートを1969年に惨殺したことで有名な集団。
当時シャロンは妊娠8か月で、襲撃を受けた際に「子供だけでも助けて」と哀願したが、それが仇となりナイフで計16箇所を刺されて惨殺された。
その狂信的カルト集団に事件当時、14歳で参加していたダイアンという女性の手記を読んだ。題名は「マンソン・ファミリー 悪魔に捧げたわたしの22カ月」。約600ページという長編で、しばらくこの手のノンフィクションの本から離れていたので、読み切れるか不安だった。でも読み始めたら内容が驚きの連続で難なく読みきれた。
ダイアンがマンソンファミリーに出会うまでの描写が長くて、本のページ数の3分の1くらい進んで、ようやくチャールズ・マンソンに出会う。でもそこまでの彼女の家族の描写が面白かった。なんせ彼女のおとうさんが娘のダイアンにマリファナを勧めるのだ。「煙を深く肺に吸いこんだら、なるべくそこに留めておくこと。最初は熱く感じるかもしれないが、咳き込まないようにな」そしておとうさんが娘に言う。「初めてにしては上出来だ」ぼくのイメージする家族と違い過ぎていて驚いた。
ダイアンは14歳という年齢が若すぎて、当時のマンソンファミリーの犯罪行為には参加を拒まれていた。チャールズ・マンソンが逮捕され、やがて彼にマインドコントロールされていた事を自覚した。以降は結婚して、子どもを産んで奥さんになっていた。ダイアンの夫は、彼女の過去を知っていたという。けれどもダイアンは過去を断ち切り、夫の家族にも三人の子供たちにも経験したことは一切語らずにいた。過去の自分の事は秘密にしていたのだ。
ところが、裁判で当時の事件の証言を要求されることになりダイアンは、マンソンファミリーにいた事実を家族に告げなければならなくなる。彼女の人生の分岐点の一つ一つが、映画にでもなりそうだと思った。
また、マンソンファミリーの女性がダイアンを含めてチャールズ・マンソンに、どのようにマインドコントロールされたのか。そのヒントがこの本の中には書かれているので、カルト集団の犯罪という事を考える意味でも貴重な本だと思った。
