「哀れなるものたち」 2023年製作 イギリス 原題:Poor Things

 

映画を観ている途中で眠りに入ってしまうことが続いて悔しい。年をとって集中力がなくなってきたのかと思い、映画館で観る事は少し控えていた。

でも、これはぜひ観たいという気にさせる映画の記事があった。女性版のフランケンシュタインの物語だという、ギリシャの映画監督ヨルゴス・ランティモスの「哀れなるものたち」という映画。主人公のベラをエマ・ストーンが演じる。映画短評というサイトの評価では、7人中4人が100点満点をつけている。

「大胆な性描写は重要。かっこよくもきれいにも見えない状況にも常に堂々と飛び込むエマ・ストーンだが、今回ここまでやったのにはあらためて感心する。(猿渡 由紀)」
「計算された映像処理など、アートの極みとしての見応えもあり、『バービー』にハマれなかった人ほど、ハマる予感大!(くれい響)」
「“フランケンシュタイン”を思わせる設定に、“怪物”が美女で、博士の側がスカーフェイスというヒネリは面白いし、モノクロからカラーに転じるやセット撮影のシュールな空気が映える映像はフェリーニ作品のように幻惑的。(相馬 学)」
と、心に残る感想が続く。

当映画は、アカデミー賞11部門もノミネートというし、これは見るべき映画だろうと思って、ひさびさに映画館に足を運んだ。

館内の入口のところで、行列ができている。時間的にちょうど一致していた「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」を観にきた人達だった。一方、「哀れなるものたち」はガラガラで、ゆうゆう観れた。でも退屈とは無縁の映画だった。眠りに落ちることは一度もなかった。

表現は少々過激で、解剖のシーンでは内臓を手に取る場面も出ているし、性的なシーンも多い。この映画を観て、”吐いた”というコメントを寄せている人もいて、そのての映像が、苦手な人は避けたほうがいいかもしれない。エマ・ストーンの体当たり演技もすごいが、映像にボカシを入れる日本の時代遅れの検閲をこの映画は排除していて、そこもいい。

ぼくがこの映画で気に入ったのはベラのダンスシーン。音楽に合わせてベラは好き勝手に自分の思うままに一人踊る。あわてた弁護士ダンカンは、ベラといっしょに踊り始め、彼女の自由な踊りの手足をコントロールして、社交ダンスの踊りに見えるように必死に取り繕う。そこがとても、笑えた。ダンカンは、いつもベラの行動と言動に翻弄されてしまう。

ところで、「ベラ」というと、妖怪人間ベムのベラを想いだすし、「ダンカン」と言うとたけし軍団のダンカンが頭に浮かんでくる。頭に刷り込まれた記憶というのは、やっかいなものだ。

最後のシーンはちょっと意外な展開だった。「交換するのはそっちではないだろう!」と、心の中で叫んだ。詳しく書くと、ネタバレになってしまうので、ここまでに留めておくけど、ほぼ満点の映画にちょっとだけケチついた感じだった。