「ひまわり」 1970年製作 イタリア 原題:I Girasoli
本棚にあった、猪俣勝人著作の「世界映画名作全史 現代編」を開いたら、映画「ひまわり」のあらすじが紹介されてあった。数行の飛ばし読みで終えるはずが、思わず引き込まれ読みふけった。
それで、ヴィットリオ・デ・シーカ監督のソフィア・ローレンの出演する「ひまわり」という映画を配信で見直した。その後で、劇場でもリバイバル上映されていることを知った。
ソフィア・ローレンといえば、CMの『胸でポン』が有名なくらい胸の大きい女性だ。それでいてあまり色気をひけらかすようなところのない、むしろボーイッシュな感じを受ける不思議な雰囲気を持った女性だ。
『胸でポン』といっても、なんだったのか忘れているのだけれど、ブログ「Working Momのひとりごと・・・」でのコメントに、このような説明があった。
『テレビのチャンネルがダイアル式からタッチ式に変わった頃のCMで、「ソフィア・ローレン、胸でポン。ジャン・ギャバンなら鼻でポン。あなたとわたし、指でポン」というような台詞を節にのせて歌うCMがあった。』CMに、ジャン・ギャバンの鼻の分まであるとは、こちらの方はすっかり忘れていた。
ぼくにとって「ひまわり」という映画は、幼い時にテレビでみただけなので、画面いっぱいに広がるひまわりが綺麗だったという記憶しかない。しかしその印象とは別の意味を持つことを知った。
映画のハイライト、地平線まで広がるひまわりは、この地に眠る無数の兵士や市民たちの墓標で、撮影が行われた場所こそ、現在のウクライナだという。ウクライナの人にとっては、ひまわりの花はウクライナの国花でもあり、いまロシアの軍事侵攻に対する抵抗の象徴にもなっている。
物語は第2次世界大戦中に、結婚した男女の物語を描いている。
結婚の後に厳冬の地、ソビエトの東部戦線に兵士として夫・アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)が送られる。戦争が終わるも夫の消息がわからなくなり、行方を必死に探すヒロインのジョバンナをソフィア・ローレンが演じる。
ようやく探し当てたひまわり畑に近い農家の中には、若くて可愛らしい奥さんと、夫との子供までいた。その可愛らしい女性が、小さな子供と洗濯ものを取り込んでいた。
アントニオは激戦に傷つき、雪中に気を失って倒れていた。その死の一歩手前で、助けてくれたのが、彼女だった。
夕方に、若い奥さんは汽車で通勤している夫を出迎えるために、ジョバンナと駅に行く。ジョバンナは工場から仕事帰りで汽車から降り立った夫・アントニオを一目みて、彼を連れ戻そうとはせずに、言葉も交わさずその列車に彼女が飛び乗ってしまう。
歳月はさらに流れ、今度はアントニオのほうが一目見た妻のジョバンナを忘れられずに、会いに来る。しかし、彼女のほうにも新たな家族が作られていた。
お互いに未練があるのは、それだけ戦争に行く前に結婚して過ごした数日が、二人には忘れられない充実した時間であったためであろう。戦争が引き金となって、起ってしまった男女の哀しい別れがせつなく、「ひわまり」は心に染み入る傑作だった。
参照:名作映画「ひまわり」に隠された”国家のうそ”
