7月19日に芥川賞の選考がおこなわれ、今回は市川沙央(いちかわ さおう)さんの「ハンチバック」が選ばれた。そのネット記事の写真を見て思ったのは今回はやけに顔の長い女性が受賞したなという事。彼女は43歳。筋力などが低下する筋疾患の「先天性ミオパチー」という難病を患っていて、人工呼吸器、電動車いすを利用している。

彼女が受賞作の主人公と同様に、障がいのある当事者であることを記事から知り、その外見の理由を知ったけど、同時に受賞作に興味を抱いた。記事には、市川さんが読書に対してどう思っているかということが、紹介されていた。作品を通じて1番伝えたかったことは、どのような立場の人も読書をしやすくしたいということ。

作品の中には「本を両手で押さえて没頭する読書は、ほかのどんな行為よりも背骨に負荷をかける」「私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保(たも)てること、書店へ自由に買いに行けること」「その特権性に気づかない『本好き』たちの無知な傲慢(ごうまん)さを憎んでいた」と表現している。

その憎むという言葉には驚いた。「文藝芸春秋」を買って受賞作の「ハンチバック」を読んだ。その中でこのような表現もある。

妊娠と中絶がしてみたい 私の曲がった身体の中で胎児は上手く育たないだろう 出産にも耐えられないだろう もちろん育児も無理である でもたぶん妊娠と中絶までなら普通にできる 生殖機能に問題はないから だから妊娠と中絶はしてみたい 普通の人間のように子どもを宿して中絶するのが私の夢です

ストリーも、彼女に興味があるのか嫌っているのか不明な田中という男が出てきて、その男に釈迦という主人公の女性が1度きりの肉体関係をお願いする。それも1億5500万払うという屈折した関係が描写されている。しかし、小説のラストだけがしまらなくなった印象だが、ひさびさに面白い小説に出会えた。ぜひ次作もパワーある作品を創作してほしいと思った。

参照:【解説】“本好きたちを憎んでいた” 芥川賞受賞「ハンチバック」