「すすきの」地区のホテル2階で、7月2日に首を切断された状態で見つかった男性の裸の遺体。見つかった遺体は刃物のようなもので、首を切断されていた。頭の部分は何者かが現場から持ち去ったとみられる。
● 1人で部屋を出る様子が映っていた
犯行現場となったホテルは、すすきの中心部の人通りが多い場所のホテルで、この場所を犯行現場としたことにも疑問が投げかけられている。ホテルの防犯カメラには男性が別の人物と2人で部屋に入ったが、この人物が1人で部屋を出る様子が映っていた。
このニュースを聞いたときに、遺体が誰であるかを特定するのに、相当な時間がかかるのではないだろうかと、最初に思った。しかし7月3日に奥さんが行方不明者届を警察に出し出していたことで、被害者が誰であるかは特定できた。自宅の指紋や手術の痕などから頭部の遺体は62歳のAさんと特定された。
その割には、犯人がなかなか捕まらない。事件が発覚してから2週間が経過した。
死亡した男性については携帯電話や免許証など、身元を確認する手がかりとなる遺留品が全く残されていなかったという。
首を切断したのは、身元の判明を遅らせようとしたのか。それとも、愛情や独占欲から持ち去ったのか。
Aさんに関する声を拾った記事を読むと、人に恨みを抱かれるような印象は伝わってこない。
近所に住む高齢女性が「ショックな亡くなり方だったので、精神的にも余計こたえます」とこう続ける。
「隣町に住んでいるA君のお母さんは、随分前に認知症になり、お父さんも最近、認知症を発症し、2人とも今は施設に入所しています。お母さんからは『Aはとにかくマイペースな子ども』と聞いていたのですが、一体、何があったのか。テレビを見ていても、ずっと気になっています」」
● このままではどうにもならん
恵庭市の同じ会社で10年以上、Aさんと一緒に働いていた元同僚もこう言う。
「Aさんは苫小牧市の工業高校卒業後、米国の農機具メーカーに就職し、東京や旭川市で勤務していました。その頃、奥さんと結婚し、2人のお子さんが生まれた。ただお子さんは2人とも病気がちで、入退院を繰り返していた。
奥さんも看病疲れから体調を崩したみたいです。そういうことが重なり、Aさん自身も心労が絶えなかったようです。『このままではどうにもならん』ということで農機具会社を辞め、家族全員で両親が住む恵庭の実家に引っ越してきたのですが、しばらく経って実家を出て今の家で家族4人で暮らし始めた。
その当時は子どもを育てることで精いっぱいだった。おとなしく自分から人に寄っていくタイプではなかったため、人付き合いはうまくなく、精神的にもつらかったみたいです。最近、久しぶりに会った時、『どう?』って聞いたら、『元気です』って話していたのですが……」
Aさんが家族にも告げずに、ススキノに向かって行ったのは何故なのか。Aさんがホテルの入る前に一人でディスコに行っていたというのをテレビニュースで聞いて、『60歳過ぎてディスコに行ってみんなに受け入れられるのか?楽しいのだろうか?』という素朴な疑問が浮かんだ。ぼくが思っているより、高年齢の人が参加して楽しんでいるようだ。
「このイベントは毎年定期的に行われてたんですけど、コロナを挟んだこともあって、4年ぶりの開催でたくさんの人が楽しみにしていました。毎回600人以上は人が入ってるけど、今回はもっといたんじゃないかと思います。
参加者の年齢層はだいたい40代から60代、DJもおじさんたちだし、流す曲も70年から90年代のディスコの流行曲とかユーロビートで、参加者の年齢層は高いんです。まるでハロウィンみたいに仮装だったり派手な格好してる人もいたし、女装やドラァグクイーンみたいな人も多く参加してました」(イベントの参加者)

Aさんは女装してディスコに参加していたという。
「Aさんは今回のイベントではとても目立っていたので、いろんな方に声をかけられていました。前にこのイベントに参加していたときはシックな大人の女性という格好で、本人も『こういうの好き。音楽が好き』という話はしていました。今回は宇宙人の格好をして踊っていて、知らない人にも声をかけられていて、イベント中いろんな人と絡んでいました。ここには1人できて、1人で帰っています」(ディスコ関係者)
彼には”女装家のトモちゃん”という、もう一つの顔があった。知人が語るということで、週刊文春の7月20日号から抜粋。
● 金髪のウィッグをつけているよう
「トモちゃんは一日のディスコイベントにも、綺麗に整えたショートヘア、白いカーディガンに、膝下まである黒いロングスカートというファッションでやってきました。終わった後はコスプレからまた元の服装に着替えて。実年齢よりも若々しく見え、四十代だと思っていました。」
当日の夜、六時間のイベントを充分に堪能したAさんは、一人でイベント会場を出た後に午後10時35分頃にスーツケースを引く謎の人物Xと落ち合っている。立ち話をしたのち、このホテル2階の一室に二人で入室。Xは約三時間後に一人でホテルを立ち去った。
Aを惨殺し、頭部を持ち去ったXとは、何者なのか。
「ラブホテル街の路上やホテルの防犯カメラを確認すると、女装した被害者と合流した時は、上下白っぽい女性の恰好で、金髪のウィッグをつけているようにも見える。つば付きの帽子を深く被っており、出る時は黒っぽい服装に着替えていた。GPSの追跡を逃れるためか、持ち去った被害者の携帯電話は、退室した時間帯に電源が落とされていた」(捜査関係者)
性別は未特定で身長は推定160センチ前後。Aさんよりも10センチほど低く、男性なら小柄な部類に入るとのこと。
Aさんの出没範囲は幅広く、若者たちが出入りするクラブからオールド世代が集まるディスコまで、立ち寄り先の一つにはハプニングバーもあったという。常連客が明かす。
「店では『トモちゃん』や『トモちん』と呼ばれていました。おしゃべりやスキンシップを楽しみ、意気投合した女性やカップルがいれば店外デートに出かけていました。その後で明け方近くになっても『これから踊りに行ってくる』とハシゴするようなタフな人。一人称は『私』でしたが、性的対象は女性だったはずです」
被害者の人物像も掴みがたく、犯人は女装した男なのか?今、どこで何をしているのか。なぜ首を切断しなければならなかったのか、防犯カメラの多い繁華街のホテルを犯行現場に選んだのは何故か、等、この事件は色々な謎が多く複雑だ。迷宮入りだけにはなってほしくないものだけれど・・・・・。
参照:札幌ラブホ・頭部持ち去り殺人「両親は認知症、子ども2人は病気がち」
なぜ首を切断?持ち去った理由は…ホテルの浴槽に頭部のない男性の遺体
〈札幌ホテル・首切断〉事件から1週間…防犯カメラに映る2人は“女性”と“女装”?
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