長野県中野市で住民女性と警察官計4人が刃物や猟銃で殺害された事件で、逮捕された青木政憲容疑者(31)。

彼は、「自分が孤独でいることをばかにされたと思い、女性を殺した」と話しているということだが、これは被害妄想に基づく思い込みである可能性が高い。

女性2人は青木容疑者の自宅前をよく散歩していたといい、青木容疑者が一方的な恨みを募らせた可能性もあるとみられている。

被害妄想によって自分が迫害されていると思い込むと、他責的傾向が強くなり、不合理な恐怖を抱き、やられたという思いから自己正当化しやすくなる。このように被害妄想は大量殺人の動機形成の一因になりやすいことが、過去の事件でも指摘されている。

まず、2019年に発生した京都アニメーション放火殺人事件(36人死亡)。その事件で逮捕・起訴された青葉被告は、「安売り肉を買うシーン、パクられた」と主張しているが、このシーンはありふれた描写であり、被害妄想を抱いている可能性が高い。

また、2015年に淡路島で近隣住民の男女5人をサバイバルナイフで刺殺した男も、「集落の近隣住民は『サイコテロリスト』だ」「自分は日本国政府・近隣住民らによる陰謀で電磁波兵器により攻撃を受けている」という被害妄想を抱いていた。

しかし青木容疑者が犯行に走った背景には、他の要因もからみ合っていたのではないか。

青木容疑者はひきこもり気味で人付き合いが苦手だったということだし、昨年末に金融機関から融資を受けて新しい事業を始めたものの失敗した可能性もある。また、県公安委員会の許可を得て銃4丁を所持しており、そのうち1丁は母親に渡して自殺しようとしていたという。

犯罪ジャーナリストの小川泰平さんは、彼の人物像に関してはどう見ているかを、5月26日放送の「よんチャンTV」でこのように語っていた。

「周辺取材をすると、母親がジェラート店をやっていて、青木容疑者も手伝っている。実際に、父親がやっている果実園、桃やブドウとかをジェラート店に運んでいるのを見た方がいるというような話があります。家族内で青木家の家庭内で何かトラブルとか聞いたことありますか?と話したんですが、「そういったことは聞いたことはない」という方が多かったです。

あとは容疑者が、あまり外に出ているのを見たことがないっていう方も結構いました。引きこもりのような生活だったんじゃないですかという方も何人かいました。本人は2015年、今から8年前に、最初に銃の所持許可を得ています。その後、銃を3回くらい買い足しているのですが、実際、散弾銃・猟銃を何の目的で所持していたのか。

そして今回、迷彩服、迷彩柄の帽子をかぶっているというようなことですが、やはり一番知りたいのは動機ですね。」

青木容疑者の犯行の謎を解く鍵は、彼の精神状態だけでなく、彼が直面していた社会的・経済的・家庭的な問題も含めて考える必要があると言えそうだ。

参照:長野4人殺害の青木容疑者、被害妄想で犯行の可能性…京アニ事件の犯人との共通点
   【小川泰平スジ読み】「容疑者は動機を話しているようだが、警察が何らかの理由で公表していない」