「女の賭場」1966年 日本

田中重雄監督の「女の賭場」は、アキという女性を演じている江波杏子の主演第1作め。無料動画サービスGYAO!(ギャオ)にて配信中。彼女の凛とした美しさと、賭場の緊張感をかんじさせ、とても面白い物語となっている。

アキの父は、親分衆を集めた盛大な手本引き花会で、立花鉄次にイカサマを見破られて自決した。アキは、自分も父の血を引いて腕を持っていたのだが、二度と花札は手にすまいと決心していた。

しかしそのイカサマが、イカサマを見破った鉄次が仕組ませた罠だったことを知り、父の仇は賭場で討とうというので父の子分だった男を相手に、厳しい花札の稽古を始めるのだった。

この賭博、花札の絵札を扱っているが、ルールは数字を当てるルーレットのようなもの。

親は1から6までを図案化した6枚の札の中から自らの意志で1枚を選び出し、子は1点から4点張りのいずれかの賭け方で親が選んだ札を推理して勝負に挑む。1点張りは当然、配当が高く4点張りは確率が高いので配当が低くなる。 15人程度の多人数が同時に参加することができ、ひと勝負は2分前後の短時間で決着するという。

この賭博での掛け声がまた、物語の効果音のよう。

「入ります」で、始まり男の「勝負!」で札の数字を披露するまでの着物姿での所作の江波杏子の美しい事。その美しさは、父の残した小料理屋で働く動作にも感じられる。顔は、鼻筋も通っており、日本人というよりは西洋に近い顔だちなのだが、着物が似合っており、むさくるしい賭場の男だらけの場所ではさらに光っている。

江波杏子は、幼少期から演技の世界を夢見ていた。5歳の時に死別した母・江波和子さんは昭和初期に活躍した女優。亡き母の夢を継ぐため、17歳で銀幕デビューを飾ったという。

当初は脇役ばかりで芽が出ず。所属の大映を辞めて舞台女優への転身を考えていた23歳の頃の事。「女の賭場」で主演の若尾文子が風呂場で転倒して負傷したため、代役として初主演すると、たちまち大評判になった。

「女賭博師」シリーズは5年で17作が製作される代表作になり、大衆娯楽作のヒロインとして絶大な人気を誇ったとのこと。

参照:江波杏子さんが急死 5日前まで仕事