「人数の町」 日本 20020年製作

 

多くのCM・MVを手掛けてきた荒木伸二による初長編映画「人数の町」を見た。

「2017年に第1回木下グループ新人監督賞の準グランプリを受賞したオリジナルストーリー」

と、言ってもピンとこないけど、前田有一の超映画批評によると、『映画会社キノフィルムズ=木下グループが、「面白いオリジナル企画には予算5000万円をつけてやるぞ」と募集をかけた「新人監督賞」で、200以上の応募作からトップ2にまで選ばれたアイデアの実写化である』とのこと。

荒木監督は、ダウンタウンの松本人志が出演するリクルートのCM「バイトするならタウンワーク」などを演出しており、「初めて公募を見た時、河瀬監督の写真があったので、世界で勝負しろということなのかなと思い、自分が一番好きなものを出してやろうと応募した」と語った。

借金取りのヤクザっぽい兄ちゃんに追われて、ボコボコにやられた蒼山(中村倫也)は、仕事もなく露頭に迷う青年。

倒れた蒼山は、空を見上げたままがつぶやく。

「俺は最高でも最低でも特別でもなかった。街に向かう他の者達と同様、意志が弱く世の中に居場所がなかった」

そこに、黄色いつなぎを着たヒゲ面の男に助けられ、男は蒼山に「居場所」を用意してやるという。連れられて行った場所は人間を数字で呼ぶ不思議な世界。

一般社会で生きるすべをなくした、ワケありの若者ばかりが集められ、ダラダラと暮らす極秘のコミュニティ。

働かなくてもよくて、運動をしたければプールもあって、食べたければ「いいね」や逆の「ディスる」言葉をスピーカから流れる指示にしたがってひたすら入力するだけで、すぐに色々な食事が出てくるというありがたさ。

あとは外出とゆう名目で、指定の候補者に投票するというお仕事だったり、謎の薬を飲まされたり。要は、何かの人数集めやテストの一人として重宝される存在だ。

性欲は、女性から部屋番号を書いたカードが渡されるので、その相手の部屋に行くことができ、逆に自分が気に入った女性には自分の部屋番号のカードを渡せばいいというお気軽さ。避妊用具は各部屋に用意されていて、妊娠は禁じられていて、子供は別の施設に集められて管理されている。

指定のパーカーを着用して、コミュニティの決められた場所からかってに出ることは許されないけれど、後は食べ放題の遊び放題。

そのわりには元々、ワケアリの人が集められているせいもあるけれど、人間としての活気に乏しい集団に見えてしまう。

なかなか、SF的発想が面白い。タモリがいざなう「世にも奇妙な物語」的な味わいのある作品だ。

もう一つ、蒼山に何気に興味を持ち、新しく踏み入れた世界の色々なルールを教えてくれる緑(立花恵理)という女性の存在が面白い。緑を演じる立花恵理は、スタイルのいい色っぽい美女。ViViモデルの出身で、本作品が映画デビュー。

緑はいつも食べているでぶっちょの男が目障りなのか、彼が食べているポークバーガーに対してイジる。「あれ、あそこでさーブタちゃんが豚肉たべちゃってるんだけど」

「聞こえるよ」蒼山は、緑をいさめるが「だって事実でしょ。そこのブタさーん、それポークバーガーですよね。完全に共食いじゃない。こんなにグロいのね」そう言われても、その男はどこかうれしそうにポークバーガーを食べ続ける。

緑はとんでもない言葉でやじっているが、その緑に部屋番号を渡して彼女とSEXしたい意志を示す蒼山。緑はすぐにその番号を払いのける。

緑は後日、プールでそのブタさんと特別な関係があることを面白おかしく蒼山に伝える。「すごいのよ。ブタちゃんの性欲。舐めてって言ったら、朝まで舐めているのよ。」

この緑に、実は子供がいることが物語で明かされ、緑の姉が訪ねてくる。そのあたりから、どこかで見たような展開になって、そっちに話が持って行かれる。SF的なストーリーの面白さが薄れてくるのが惜しい。

蒼山を演じた主演の中村倫也が映画の公開記念の挨拶時にこのように表現している。

「あまり語らない方がいい作品。それぞれ反応、感じること、記憶に残ることが違う映画。何度も思い返しながら生きてほしいと思います」

まさしく、予備知識なしで見たほうが面白い映画。蒼山が連れていかれる世界をいっしょに体験しているかのように感じながら見ることができる。

はたして自分なら、『楽チンで努力しなくても、そこそこいい生活を送れる世界から抜け出すことができるか?』などと考えながら物語を追っていくのも面白い。

参照:中村倫也が独特アピール 主演の『人数の町』は「あまり語らない方がいい作品…