「蠱惑(こわく)パリで出逢った女」2005年 スペイン 原題:NINETTE
 

ホセ・ルイス・ガルシ監督の「蠱惑(こわく)パリで出逢った女」を見た。DVDのジャケット写真は背景色は黒、さらに黒い下着姿の女性がポーズをとっていて、いかにもエロチックサスペンス風。

ところで、タイトルの蠱惑(こわく)の意味は、人の心を乱しまどわすこと。たぶらかすこと。

さらに蠱惑の「蠱」という漢字がおどろおどろしい。「蠱」を分解してみると、皿に虫が三匹乗っかっている字。しつこくその漢字の由来を調べてさらに驚いた。

蠱は、器に多くの「虫(キ)」を入れて共食いさせ、残った一匹が強い呪霊を持つとして、それを使って他人に病害を与える呪儀とされ、中国の占の記録にも、「王の咼(わざわひ)あるは、これ蠱ならざるか」など頻繁に現れるという。何とも不気味な意味を持っている。

さて、映画のほうもぼくはゾッとするような展開を期待したのだが、けっこう明るいロマンティックコメディ風。

救いは、主人公の恋人から奥さんになるエルサ・パタキー演じるニネッテ。とてもスタイルがいいし顔にも愛嬌があって、美人だしどこか井森美幸の表情に似ている。

主人公の中年男アンドレは、きゅうりみたいな細くてどこかぱっとしない印象。その男が友人をたよって女の子と遊ぼうという下心でパリ旅行に行くところから話が始まる。ところが友人の用意した下宿先は、スペイン人亡命者の家。そこは禿げてふとったおっさん初老夫婦の家で、アンドレはパリの優雅なホテルをイメージしていたのでがっくり。

しかし、そこの家の23歳の綺麗で明るい娘・ニネッテと出逢って、友人もほったらかしで彼女に夢中になってしまう。

そして、ニネッテの想像妊娠発言で、とうとうアンドレは彼女と結婚まで決まってしまう。娘の妊娠に怒っていた彼女の両親もちょうど帰国を考えていたので、結婚を機に娘夫婦と一緒にスペインで暮らし始めるのだった。

この映画、全て部屋の中とか階段しか出てこなくて、外の景色がまったく出てこない。パリといいつつパリの景色のワンカットすらない状態。それでもそこそこ面白く見せてくれるのはすごい。

でも、よくよく考えると、ひどい言い争いになるような場面がことごとくスムーズに物事が進んでいる

終盤、旦那さんのアンドレはニネッテのお父さんに自分の店を相談すらなしに乗っ取られてしまうのだが、そこはまるでどこ吹く風というような表情で終わっている。

『この物事のゴタゴタにこだわらないあっさりした感じをもう少し突き進めて、映画にもお金をかけて、パリの綺麗な名所の風景も入れてリメイクしたら、案外傑作に変身するのでは?』と、ふと思ってしまった。