「ジェーン・ドウの解剖」2016年 イギリス 原題:The Autopsy of Jane Doe
 

アンドレ・ウーブレダル監督の「ジェーン・ドウの解剖」は、一家3人が惨殺された家屋の地下から身元不明のとてもきれいな女性、通称「ジェーン・ドウ」が全裸で死亡していて運ばれてくるが、その解剖を依頼された検死官の父と息子の物語。

出演者は、父と子,解剖される若くて綺麗な女性の3人でほとんどのシーンが占められていて、内容はわかりやすい。

全米最大のジャンル映画の祭典「ファンタスティック・フェスト」で最優秀作品賞の栄冠に輝いている。

解剖台にあがった女性を演じたのは、ファッション誌「VOGUE」や各種CMなどで活躍した人気モデルのオルウェン・ケリー。役作りのために浅い呼吸の練習をしたり、ヨガの瞑想教室へ通ったりもしたという。

死んだ役というのは、難しくてかなりの名優と言われた人でも、どこかしら呼吸に合わせて体が動いてしまったりする。でもこの女優さんは、ピタリと静止し続けていたからすごい。

みごたな死体の演技で、生きている演技者たちを超えていた。それでいながら当然、実際に演じている彼女は死んでいないのだから、静けさの中、不思議な色気と不気味さに溢れていた。

解剖台に上がっている状態は全裸で、彼女のプロポーションの良さも見事なのだけど、肌も綺麗でその見事な体にメスを入れるのがもったいないと思わせるくらい。いや、その美しさを保ちつつ全裸で解剖されてしまうという悲劇が、観ている男性側のある感覚(被虐性?)が刺激されて妖しい映像に変わっている。

解剖の様子は、これでもかというくらいに見せてくれる。口の中まで覗いて、皮膚の裏側まで確認する。それに頭蓋骨を切って、脳みそまで取り出して顕微鏡で覗く。その結果に父と息子が「あ!」っと驚く内容に展開する。

ぼくはこの映画を最初は、彼女を解剖することで事件を解決に導く手がかりにつながると思ってみていた。ところが、彼女の解剖でわかってくる事実が、あまりに現実的ではない方向に加速していく段階で、ホラー映画であることに気づかされてしまった。

ぼく個人としては、ホラー映画ではなく現実的な事件のお話として見たかった。

しかしその想いを差し引いても、「ジェーン・ドウの解剖」という映画は独特な味をもち脳裡に焼き付く面白い映画だった。