「ドリームプラン」 2021年 アメリカ 原題:King Richard

 

自分の子どもを一流のプロのテニスプレーヤーにするべき計画書を78ページに渡り作成し、それを実現した男の実話を映画化したレイナルド・マーカス・グリーン監督の「ドリームプラン」を観た。

テニス界のトップに10年以上にわたり君臨した姉妹(姉ビーナス・ウィリアムズ、妹セリーナ・ウィリアムズ)を育てた父親は、テニス未経験で独学でテニスの教育法を研究した。ウィル・スミスが主演を務めた。

脚本を手掛けたザック・ベイリンは、劇中には登場するいくつかの信じがたいエピソードについて、「脚本のほぼすべての内容が事実に基づいている」と語っている。

とても面白かった。2時間半近くあるので、”途中寝てしまわないか”とか”飽きないか”とか、心配したのだが、まったくその心配はなかった。

基本、親が子供の将来に関わりすぎる姿勢にぼくは疑問を感じる。でも映画はあまりに面白かったので、いい意味で完璧な娯楽作品だった。だから、アカデミー賞に6部門ノミネートというのがちょっと意外なくらい。

その70ページの計画書にはどんな内容が書かれていたかが気になる。それだけの計画と実行ができる父親・リチャードの子どもができる以前の生活にも興味が沸いた。

ところで、当映画の物語は、子供の立場から考えたら、どうなのだろう。

親の計画書に従って、自分の人生が方向付けられるというのは、最初はわからないままに従っていても、途中から相当な抵抗を感じるのではないか。

そのように思って観たが、映画で描かれていた子供の父親に対する反抗はほんの一部分。

画面では、父親はジョークも交えて子供と会話し、子供同志もテニスで競ったりふざけて笑ったりと家族の関係はうまくいっているように見えた。また、父親はテニスだけやらせるわけではなく、勉強にも力を入れているので、子供の学校の成績も優秀で、文句のつけようもない。

それに、父親はお金のためだけに動くわけではなく、将来的な展望の元に行動するので言い寄ってくる商品のスポンサーや、テニス指導の一流と言われている人の意見にも盲目的に従うことはしない。

またテニスの試合の場面は迫力があり、サーブの音、打ち返す音などが効果音となり緊迫感を感じさせた。

この映画のヒットは嬉しいし当然の結果と思えるのだが、この映画に感化されて『子供を自分の人生計画の道連れにして、世間にのしあがろうとする親が増えてしまわないか』と、いうことだけが心配だ。