
「風に濡れた女」 日本 2016年
季節は夏の終わりごろか ・・・・・。
かつて劇作家として知られた男は、リヤカーを引きながら海辺にたどり着き、文庫本を読んでいる。
そこに突然若い女性が、自転車に乗ったまま海の中に突っ込んでいく。そして、「はぁはぁ」言いながら海から上がって男の前で水に浸かったTシャツを脱いで水を絞り上げる。彼女は上半身裸になってしまう。
「あんたこの辺の人?よかったら今晩泊めてもらえないかな?他にどこもあてがないし。」
男は無視し、リヤカーを引いて自分の家に向かうが、
「おい、おっさん、おっさん、誰もただで泊めろとは言ってないでしょ。ねえ5千円でどう?オールなら安いでしょ。おにいさん、だいぶごぶさたでしょ」
男は体ごとからんできた女を投げ飛ばすが、
「おい、おっさん!人の好意を無視すると罰が当るよ!」若い女性の汐里はつきまとって離れない。
男は都会を避け山小屋で自炊生活をしている。その生活の場まで女はついてきてなんとか彼を自分に振り向かせようとする。「あんたあたしにロックオンされたんだ!逃げられると思うなよ。」と宣言する。
塩田明彦監督の「風に濡れた女」はこのようなつかみのうまい出だしで始まる。
「風に濡れた女」は、日活ロマンポルノの製作開始45周年を記念した「ロマンポルノリブートプロジェクト」の一環として作られたという。『リブート』ってなんだ?と思って調べたら『シリーズにおける連続性を捨て、新たに一から仕切り直すことを意味する』ということだけど、それにしては注目度も作品数も少なすぎる気がする。なかなか採算が合わないのだろうか。
当映画は日活ロマンポルノだから、からみは多いものの、色っぽさはあまりない。
抱き合っているのか、格闘しているのかわからないような場面が多々あり、最後には山の中の男のボロ家は、そのつきまとった女性・汐里(しおり)とのセックスが激しすぎて、崩壊してしまう。ここは笑ってしまった。
この作品は第69回ロカルノ国際映画祭で若手審査員賞を受賞したとのことで、香港上映も2016年12月22日より決定したという。ロカルノ国際映画祭は、スイス南部のロカルノで、1946年から毎年8月に開催されている映画祭。
2016年12月17日の初日舞台挨拶が東京・新宿武蔵野館で行われ、塩田監督は「この作品には、けっこう香港映画の影響が入っているんです。撮りながらこれはチン・シウトン監督の『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』に似ているなと思って」と明かし、間宮夕貴と永岡佑は「(香港に)行けないんですかね?」「行きたい!」と目を輝かせたという。
映画の物語に関してだけど、結局、この男につきまとった女性がなぜにこんなにも激しい性格になってしまったのか、欲望に忠実なのか、その背景がわからない。
また、女性を絶つと言って人を避けた場所で禁欲的な生活を選択した男が、彼女に生活を壊されてしまった事の心情も深刻には描かれていない。それでも、無条件に楽しめる躍動感が、作品から感じられる。
塩田明彦監督の違う作品も見たいと思わせてくれる不思議な面白さにあふれた映画だった。
参照:ロマンポルノ「風に濡れた女」は獣!?間宮夕貴、塩田明彦、永岡佑が漢字で例える