「キングスマン ファースト・エージェント」2021年アメリカ 原題:The King's Man

『キック・アス』などのマシュー・ヴォーン監督が放った痛快スパイアクション第一作めの「キングスマン」は、格闘シーンや登場人物の背景が斬新でパンチをくらったような快作だった。

二作目は、一作目の設定をひきずりつつも一作目の衝撃にはとうてい及ばず、では三作目はどうかということでシリーズ全てを監督しているマシュー・ヴォーン監督の「キングスマン ファースト・エージェント」を観てきた。

● 目が離せなくなる怪僧ラスプーチン
第1次世界大戦を背景に、スパイ組織「キングスマン」の誕生を描いた物語ではあるけれど、一作目、二作目とは別の物語として観れる。

出だしは、捕虜が収容されたキャンプを家族で訪問するシーンで、そこでの悲劇の描き方が効果的で期待できたのだけど、緊張感が続かず前半は眠くなり、うつらうつらしつつ見ていた。

ところが、主役のオックスフォード公に立ちふさがる敵・怪僧ラスプーチンの登場から俄然、面白くなった。まさに目が覚めた。

 

ラスプーチンはかつて歴史上に実在した人物だ。演じるのはリス・エバンスで、「ノッティングヒルの恋人」や「アメイジング・スパイダーマン」に出演している。今回の怪演は彼から目が離せなくなる。ぼくの中では主役と主役の息子を演じた存在感を軽く超えていた。

オックスフォード公が足にけがをして、ビっこを引きずっている。それをラスプーチンが別室に呼んで、祈祷により直そうとする場面。

中年のオックスフォード公を椅子に座らせて、足の傷を出させてそれをラスプーチンが吸う。『ぐちゅぐちゅ!ぶちゅぶちゅ!ぐちゅぐちゅ!ぶちゅぶちゅ!』なんだかとんでもない下品な音を出して足を吸いまくる。オックスフォード公が、のけぞって呻く。
『アダルトビデオか!』と、ツッコミを入れたくなるような変な脚舐めシーン。

それと、ラスプーチンがダンスをしながらの戦いのシーンが迫力満点。

サッカーをしながら少林寺を行う「少林サッカー」という映画を観たときの感想として、「少林寺の足や手の動きをもっていれば、確かにいろいろな事に、応用が利くように思える。足や手の早い動きならダンサーになれそうだ。今度は、『少林ダンサー』とゆう映画はどうであろうか?」と、書いたが、ダンスと格闘技の融合が実現した気分だ。それもぼくの予想を超えて、格闘シーンとしても迫力満点だった。

● 博物館に保存の33センチ
ところで、実際のグリゴリー・ラスプーチンはどのような人生を歩んだ人物なのか。

彼は1869年1月9日、シベリアの寒村にて農夫の一家で第5子として生まれる。

ラスプーチンは学校に通わなかったので読み書きが出来なかった、村人の大半は読み書きができなかったので、当時はめずらしい事ではなかった。23歳の時に、すでに結婚していたが唐突に父親や妻に「巡礼に出る」と言い残して村を出た。

最初は、まじめに道を究めようとして熱心な修行僧でいたが、力を持つ人物との交流をきっかけに、彼自身も政治的発言力を持つほどにかわっていく。また人々に病気治療を施して信者を増やし「神の人」と称されるようになった。

彼は、女性にたいへんもてたし、漁色家でもあった。また金銭に対して無頓着であり、金銭を受け取ってもすぐに他人に譲ってしまうことが多々あった。

彼がもてたのはちんちんがとてつもなくでかかった事も一因とされている。なんせ33センチもあった。暗殺者たちに切り取られたちんちんは、サンクトペテルブルクの博物館に保存されているとのこと。47歳にて暗殺される。

ラスプーチンの黒い衣装で観を包んだ、独特な変態オーラを映画の中でまだまだ観たいと思っていたのに、登場時間があまりに少ない。その事は欲求不満として残ってしまった。キングスマンはどうでもよくて、今度はリス・エバンスが演じるラスプーチンを主役とした映画を観たいと思った。

参照:グリゴリー・ラスプーチン ウィキペディア