「キャッシュトラック」 2021年 アメリカ・イギリス合作 原題:Wrath of Man
 

ロサンゼルスにある現金輸送専門の警備会社に入った中年のガタイのいい男。しかし入社試験にギリギリで合格した彼は、特に期待もされなかった。「ひさびさに銃をさわって、調子がでなかったのかい?」などと、試験管に言われるレベル。

そんなある日のこと、彼の乗ったトラックが強盗に襲われる。同乗していた普段から威勢のいい男が、おびえてまず逃げることを考えているのに、その新人の中年男は対照的に実に冷静に行動する。さらには驚ろきの戦闘能力を発揮し、強盗からの被害を完全に阻止する。

「彼はいったい何者なのか」と、警備会社の同僚がひそかに疑問に思うのと同時に、観ているこちら側にも謎が突きつけられる。

ガイ・リッチー監督の「キャッシュトラック」は、ジェイソン・ステイサム演じる通称“H”と呼ばれる男の謎とすばらしいアクションシーンで、ぼくにはついこの前に観た007よりも面白いと思った。最初から最後まで心地良い緊張感が画面に溢れ出ていた。

この体に染みわたる、癖になりそうな面白さを提供してくれた監督は、どんな人生を歩んできたのか。

ガイ・リッチー監督は、子供の頃に観た「明日に向って撃て!」に強烈に影響を受け、映画監督を目指した。

読字障害のため15歳で学校を辞め、映画学校には行かず雑用係として映画スタジオで働くようになった。映画スタジオに働き出してすぐにその才能を発揮し、コマーシャルやミュージック・ビデオを手がける。

1995年に初めての短編映画『The Hard Case』を制作した。続いて監督した群像劇『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』がヒットし、注目されるようになった。英国の映画興行収入では第1位を獲得。続く『スナッチ』でも賞賛を浴びたという。

2000年11月22日にアメリカの歌手マドンナと結婚。スコットランドの城で式を挙げた。しかし、8年後に離婚している。

2009年にロバート・ダウニー・Jrとジュード・ロウを主演に迎えた『シャーロック・ホームズ』が公開。これまでで最も興行的に成功した作品となったという。しかしぼくには、ホームズがスパイのようにやたら強いキャラ設定になじめず、この作品はパスしていた。今度はぜひ、この作品も見たい。

そして、この映画で改めてジェイソン・ステイサムの役者としての存在感に圧倒された。彼の主演作で代表作でもある「トランスポーター」シリーズを見直したい。