NHKの連続ドラマは、1997年に放送された「あぐり」の再放送と新作の「おかえりモネ」を観ていた。でも「あぐり」の面白さに比べて「おかえりモネ」のドラマのスローテンポさや登場人物のまったり感についていけなくて、見続けるのは断念。

それにしても「あぐり」には本当に楽しませてもらった。来週で終わりかと思うと残念だ。NHK90年代の朝ドラのランキングで、ねとらぼ調査隊のアンケートにて1位を会得している。

あぐりを演じた田中美里は、観ているだけで心休まる不思議な雰囲気を持った女優で、同じまったり感でも、彼女の場合はまったく気にならない。むしろ、哀しい場面や怒りの場面でのどこかワンテンポずれた演技がドラマに意図していない空気を出していて微笑ましかった。

だんなさんを演じた野村萬斎(のむら まんさい)も、いつも笑顔だけれど、真剣な顔をした時のその場の空気を止めたかのようなまなざしと動作がピタリと静止したギャップがすばらしく、ドラマ放送時に女性に人気抜群だったというのもうなずけるところ。

田中美里は、野村萬斎から演技を学んだことをインタビューでこのように語っている。

「あぐりの夫のエイスケさんを演じた野村萬斎さんは狂言師でもあるだけに、何でもないセリフがおもしろおかしかったりして、こんな表現の仕方があるのかと感じることが多かったですね。

せりふは真面目に読むこともできれば、ユーモアも足すこともできると教わりました。ほかの作品に入ったとき、真面目な部分でもクスっと笑えるところはないかなと探してしまうのですが、それは萬斎さんを見てきたからだと思います。

役者になる前から本が好きでした。本は想像が無限に広がっていくので、台本がある演技は映像になって1つの答えを出すみたいで、面白いことなのかなと思っていた時期があったんですね。

それを払拭してくれたのが萬斎さんでした。台本に書かれているもの以上の面白いことを常に考えていて、台本から飛び越えたものを作られていました。こういうふうに演技をしていくならこの世界はとても楽しいし、ちゃんと女優さんになりたいと思えたのは萬斎さんのおかげです。」



このドラマでは、改めて発見した演技のうまい女優、男優が多かった。

山田邦子の女子高の担任教師役の上手かった事。コミカルで、それでいて最後にあぐりと出会って交わす親愛の場面など、感心してしまった。

ただの巨乳タレントの一人(失礼!)だと思っていた細川ふみえも、どこかねじのとれたようなホワンとした人物像の演じ方が良かった。もう少し、いろいろな映画やドラマに出てもいいように思えるのだが、最近はどうしたことか。

未亡人下宿シリーズで有名な、ポルノ映画の監督だった山本晋也のボケ老人の役にも、最後に笑わせてもらった。

まあ細かくあげていけばきりがないのだけれど、ぼくには貴重は連続ドラマの一本となった。

参照:【朝ドラのころ】1997年「あぐり」田中美里(2)野村萬斎の姿勢に感銘「ちゃんと女優さんになりたいと思えた」