「母は死亡し、妻は失明…凄惨な実験の末「世界初の全身麻酔手術」を行なった日本人」というタイトルの記事がサイト「YAHOO!」に掲載されていて、タイトルの重々しさに思わず読んでしまった。
その世界初の全身麻酔手術を行ったのは、華岡青洲(はなおかせいしゅう)という江戸時代の外科医。
彼のおとうさんは、村医者をしていた。そのため、彼は幼い頃から、父親が行う麻酔なしの手術を、目の当たりにしていた。麻酔しないで手術するので、患者の苦しみは相当なもの。
何とか苦しまずに手術できないものかと考えた華岡青洲は、漢方とオランダ式の医療を学んだ。しかし、当時のオランダ式の手術は、麻酔なしで行われていたので、これでは父親の手術と変わらない。
当時の手術のあり方に疑問を感じていた華岡青洲は、華陀(かだ)を用いた麻酔薬、「麻沸散(まぶつさん)」の存在を知る。これが、麻酔薬を開発するきっかけとなった。
しかし、本当に人間に用いても安全かどうか確かめるには、人体実験を行う必要があった。危険な人体実験を、母親の於継(おつぎ)と、妻の加恵(かえ)を使って行う。この2人は、自ら実験台になることを申し出ていた。しかし、実験の結果母親は死亡し、妻は失明してしまう。
想像するに、医学の進歩との引き換えの家族を犠牲にした気持ちが重くなる代償だ。記事を読んで彼に興味を持ったので、1966年に発表された有吉佐和子による小説「華岡青洲の妻」を読んでみたいと思った。
