「Mr.ノーバディ」 2021年製作  アメリカ 原題:Nobody

二人の子を持つ普通の中年男が、自宅に侵入した強盗に出会って何も抵抗できなくて、子どもや奥さんにも、そして警察にも見下される。それがあるきっかけで世の理不尽に怒りを爆発させ、スイッチが入って大活躍するというイリヤ・ナイシュラー監督の「Mr.ノーバディ」。

ここんところ、しばらく映画館に入っていなかったので、軽い気持ちでこの映画をチョイスした。席の予約のときに前から5列くらいしか取れなくて、これは人が入らないのとコロナで席を一時的に封鎖してしまったのだろうと思った。最近、ぼくが行く映画館では20人くらいしか入っていなかったから。

でも、席に入る為に扉を開けて中に入ると、後ろは満席になっていて驚いた。券をぼくは見直した。『間違った番号の扉を開けたかな?』と思ったが、そうではなかった。

『そんなにコマーシャルでも流しているわけでもないのに、この人気はどうなってんの?』と、思った。公開してまだ1日しかたっていないではないか。

物語は、体中傷だらけでぼろぼろの主人公の中年男が、手には手錠がはめられたままで、たばこを口にくわえている様子から始まる。

そして、ツナ缶のような缶詰を取り出して猫にあげる。

机の前には、捜査官と思われる男と女が、机を隔てた彼を眺めた後で質問する。
「アンタ何者?」

画面は変わり、彼がボロボロになる前の普通に過ぎ去っていたであろう日常の経過が映し出される。

工場で会計士をしている主人公がコーヒーを入れて飲んだり、ゴミを出したり、筋トレで懸垂をおこなったり、まだ幼い娘とのふれあいを楽しんだり、息子に声をかけたり・・・・・・
そんな普通の一日が、曜日が変わるごとに画面に「Monday」とか「Tuesday」と大きく表示され、太鼓のような効果音が鳴り響き、一日、一日が変化していく。

ぼくはそこで、感心した。一日の決まりきった繰り返しも、このように映画で表現すると、こんなにも見応えのある画面に変化するのかと・・・・・・・。

しかし、その繰り返しの一日のなかで、大きな変化が起きる。

家に男女の強盗二人組が押し入る。そこで抵抗せずに逃して活躍できなかった主人公。息子には「父さんには失望だ」と、キツイ言葉を投げかけられる。ところが、次の場面で思いがけない展開になる。

ぼくはだらんとして見ていた姿勢を正し、思わず座りなおしてしまった。ぼくが思っているより、この映画は相当に作りこめられ考えられて、作成されていることに気がついた。

とゆうことで、その後は映画の予告編でも紹介してあるバスでの大暴れに繋がっていく。

当映画は、何も情報を入れずに見にいくことが一番衝撃を受けるのではないかと思う。ぼくは、予告編は後でネットで観たので、格闘シーンにより衝撃を受けることができた。

ボブ・オデンカークが主役を演じているが、彼は傑作ドラマ「ブレイキング・バッド」でソウル・グッドマンという弁護士役を演じた。ドラマで何度も目にした俳優だったのだ。その時の印象とまるで違う別人を見ているようだったので、最後まで役が重ならずに見ることができた。

彼は今回の父親役にむけて4年に渡ってトレーニングを積んでいたという。それも納得の出来栄えだった。