「クルエラ」 2021年製作 アメリカ 原題:Cruella
 

ディズニーアニメーション『101匹わんちゃん』に登場する、悪役クルエラの誕生秘話を描いたディズニーの実写映画『クルエラ』。

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』のクレイグ・ギレスピー監督がメガホンを取り、『女王陛下のお気に入り』のトニー・マクナマラが脚本を執筆した。

まずは観終わって、「実に面白かった!」という満足感に浸れた。

どこかマニアックな色付けのしてある映画なのかと思いきや、音楽も新曲の他に1970年代の懐かしき曲も入り、ノリのよさでファッショナブルな画面に負けずに気持がよく、あっとゆうまに観終わった124分だった。

● エマ・ストーンとエマ・トンプソン
パンクムーブメントが吹き荒れる70年代のロンドンが舞台。エマ・ストーンの演じたデザイナーを夢見る少女エステラ。
ロンドンの老舗百貨店での勤務になったものの、掃除まがいの雑用しかやらせてもらえなかったエステラが、カリスマデザイナーのバロネスに出会ったことにより、人生が劇的に変貌してゆく。

エステラがまわりのデザイナーをあっとゆうまに飛び越して、バロネスの信頼を勝ち得てゆくテンポがよく、とてもワクワクさせてくれる。

クルエラの髪は、左右に黒と白に分かれているが、彼女の生活も二つに分かれている。
バロネスにひたすら従っているかのように見えるエステラとしての姿と、バロネスを逆にデザインとパフォーマンスで超えてひれ伏させようとする復讐に燃えたクルエラとしての姿。
その二つの姿をエマ・ストーンはどちらも魅力的に演じてみせた。

また、見事な嫌われキャラのカリスマデザイナー・バロネスを演じたエマ・トンプソンもすばらしい。
(演じた女優がどちらもエマがついてややこしいが・・・・・・)

エマ・トンプソンはぼくの好きな映画「日の名残り」(93)で第66回アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされた女優。このときより、今回は独特な威圧感と色気があり、そのパワーに圧倒されてしまった。

● クルエラのモデル
一つだけ贅沢を言えば、恋愛的な要素がクルエラ自身に描かれておらず、女性としての存在感、色気がちょっと薄く物足りなかった。と、思っていたら実はクルエラにはモデルがいて、そのモデルとなった女性はバイセクシャルだったという。その女性はハスキーな声と大胆な言動で注目されていた往年のハリウッド女優タルラー・バンクヘッド。

『101匹わんちゃん』のアニメーターでもあったマーク・デイビスは、過去に『ロサンゼルス・タイムズ』紙にクルエラの誕生秘話をこう明かしていた。

「クルエラを描くときには、部分的にモデルにした人が何人かいました。タルラー・バンクヘッドは、私にとって“モンスター”でしたね。背が高くてほっそりとしていて、絶えずしゃべっていた。何を言っているのかわからないけど、一言も口を挟めないような、そんな人でした」



彼女は1日120本のタバコを吸っていたとされ、完璧に整えられた髪に毛皮のコートを着て、高級車のベントレーで街を疾走していたことでも有名。その後はロンドンからハリウッドへと渡り、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『救命艇』に出演するなど、幅広く活動したとのこと。

さすがに、この禁煙が浸透している現在で、ヘビースモーカーの部分はクルエラには取り込まれなかったようだ。

物怖じしない発言や大胆な行動で、度々下品だと非難されることも多かったタルラー。あるとき、記者にこう言ったそう。

「パパは、男とアルコールについては警告してくれたけど、女とコカインについては気をつけろと言ってくれなかった」

映画のクルエラも面白いけど、モデルとなった女優タルラーの人生もハチャメチャそうで興味がわいてくる。

実は既に「クルエラ」の続編が企画されているとのことなので、次回はもっとより深く色気も加えてクルエラが過激になるように、そこは期待したいところだ。

 

参照:『101匹わんちゃん』クルエラのモデル?女優タルラー・バンクヘッドの人生