4年前に、茨城県日立市の県営アパートで、妻子6人を殺害し建物に火をつけた36歳の男の裁判員裁判。男は事件について「倒れてから記憶がないので、分からないとしか言えない」と語った。

● 妻を他の男性に取られるくらいなら
6人の命を奪ったとして、逮捕・起訴されたのは父親の無職、小松博文被告(36)。31日から始まった小松被告の裁判員裁判にて、めがねをかけ、頭を丸めた姿で法廷に現れた。
冒頭陳述で検察側は「被告は妻(恵さん)に離婚を切り出され、離れるくらいなら殺してしまおうと思い立ち殺害した」と説明。「6人の命が奪われた結果は重大。残虐な犯行態様で計画的だった」と指摘した。
小松と恵さんが出会ったのは2010年。当時小松が通院していた茨城県の病院で、恵さんは働いていた。小松から声をかけ二人は知り合う。恵さんは前夫と離婚し、当時三歳だった夢妃(むうあ)ちゃんとアパートで暮らしていた。二か月後、小松がアパートに転がり込む形で同棲が始まった。
弁護側は、小松が恵さんに離婚を切り出された後に睡眠が取れないなどうつ病になり、精神障害の影響で心神喪失または心神耗弱状態にあったとした。
これに対し、検察側は─。
検察官「犯行直後自ら警察署に出頭し、犯行の具体的な内容を話したことなどから、小松被告が家族を殺害したことは明らかである」
動機については─。
検察官「定職に就かず自堕落な生活を続けたことなどにより、妻に愛想を尽かされて離婚を切り出された。妻を他の男性に取られるくらいなら、妻を殺害し子供5人も全員殺害しよう、と考えた」
こう指摘した。
ネットで良く出ていた意見は、「なんで奥さんの浮気相手には何もせず、奥さんと子供に全て殺意を向けたのか」という疑問。
浮気相手は堅気ではないことを匂わせてきたというが、真相はどうなのか。男として、かなわない圧迫のようなものを小松は相手に感じていたのだろうか。
妻の恵さんを知る人「(恵さんは)ろくに働かないと言っていた旦那が。(子供の)おもちゃとかゲーム機とかを知らない間に(小松被告が)売りに出しちゃって小遣いにしてたとか」
検察側は、子供までもあやめた理由について、
「殺人犯の父親を持つことになり、かわいそうだから殺害した」と指摘した。
● 自分だけ死のうか、みんななくしちゃおうか
さすがに、小松の『倒れてから記憶がないので、分からない』という言い訳はきかないのではないか。
弁護側は心神喪失で無罪に当たるとして、責任能力を争う姿勢との事だが、心神喪失というわりには、週刊文春の2018年2月8日号に事件についてかなり具体的な告白をしたことが掲載されている。
文春記者は水戸拘置所で小松に7度にわたり面会。犯行に至る“運命の一週間”の全貌を聞いた。
きっかけは犯行のわずか6日前。小松が、恵さんの携帯に、一人の男とのLINEのやりとりを見つけたことだった。浮気を疑い問い詰めると、返ってきたのは「離婚したい」という言葉だった。
小松は相手の男・A氏の家を突き止め、直接対決に臨んだ。しかしA氏に軽くあしらわれたという。小松は言う。
「(A氏は)『最初は手を出そうと思ったけど、旦那がいるって聞いたから出してないよ』などと飄々と言い、自分が暴力団関係者のようなことを匂わせてきたんです」(A氏は週刊文春の取材に対し、その発言を否定)
A氏は、建設関係の仕事をする四十代の男性で、暴力団関係者の件に関しては「でも俺は『暴力団だ』とかは言っていない。兄貴って呼んでいる人がいて、たまたまその人と電話していたから、勝手にそう思ったんじゃないの?」と、語っている。
結局、話し合いの末、恵さんがA氏と縁を切ることを条件に、小松は一度は離婚に同意した。しかし翌朝、恵さんの意志は一転。加えて小松は、A氏のアパートの前に恵さんの車が停まっているのを発見した。
「まだはっきりとした殺意はありませんでした。ただ、どうしようか、どうすればいいのかとずっと考えていました。自分だけ死のうか、みんななくしちゃおうか」(小松)
「自分の心臓の音が近所に聞こえるんじゃないかと思うくらい大きかった。身体がこんなに震えるのかと思うくらい激しく震えた。寝ている妻に近づいて、布団の上から一刺し......しました。その時、妻が長女の名前を呼んだんです。『ムー』って。その声を聞いて余計に焦った。
無我夢中で刺した......それから長女の方に向かって行き、包丁を落とした・・・・と思います」
朝五時五分、足にやけどを負い、ズボンを脱ぎ捨てパンツ姿で日立署へ駆け込んだ小松は、泣きながら「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返していたという。
「正直、死刑は恐ろしいです。でもそれしか道はないのも分かっています。恵の両親、ご遺族には本当に申し訳なく思っています。何をしたら償いになるのか、どうすれば償えるのか、ずっと自問自答していくと思います」
と、週刊文春に答えていたのに、『心神喪失で無罪を主張』という結末では、恵さんの両親や遺族は本当に救われない。自問自答は何処に行ったのか・・・・・・。
参照:“家族6人殺害”検察「妻に愛想尽かされ」
週刊文春2018年2月15日号