
「盗聴者」 2016年製作 ベルギー・フランス合作 原題:La mecanique de l'ombre
お金に執着することもなく、ごく普通に生きて仕事をしてきたのに、気が付いたら犯罪に加担していて、抜けられなくなり命の危険すらでてきた・・・・・・
という展開が一番怖い。
トーマス・クルイソフ監督の「盗聴者」は、主人公デュバルがごく普通のまじめで融通のきかない離婚歴のある中年男。だから、身に思いがけない危険が迫ったときの恐怖感が、独特な緊張感とリアル感を高めた。
デュバルは、保険会社に勤めていたが、心身を病みリストラに合い仕事を探していた。不況でなかなか仕事がみつからないなか、ある面接で謎の企業から仕事の依頼が告げられる。
「我々の役割はある人々を監視すること。会話を全部できるだけ忠実に書き起こすこと」
膨大な量の盗聴記録のテープを聞き、それを文字起こしをするという内容の仕事だった。
「私が適任か 履歴書をもう一度・・・」
と、いったんは断ろうとする。しかし、そこの面接員から「必要なのは経理と同じ正確さと厳密さです。タイピストではない」と、勧められる。
デュバルは断酒の為のグループセラピーに通っているのだが、ある日一人のショートカットの女性・サラに出会う。サラは「グループワークとか、お祈りは向いてないの」と、言ってセラピーには一度きりで来なくなる。但し、デュバルの優しさに好意を感じていた。サラとの交流が、緊張感のある物語の中で小休止のような効果をもたらしていた。やがて、彼女にも危険が及ぶ事に至る。
ある日、テープの内容を聞き書き起こしていたときに思わず手を止めてしまう。テープの今までの内容から、次期大統領選の密談や、テロリストに関する会話にまで及んでいたのは知っていたが、会話が中断されたときの音が、生死にかかわる重大な事件がおきたと思ったからだ。
危険な匂いを感じとったデュバルは、やめたい旨を手紙にタイプして入れるのだが、連絡がつかない。上役と名乗る男に相談する。その男は、文字起こしのさいに部屋によく入ってきて、コーヒーを飲み大きなあくびをしている男だ。最初はデュバルの話をじっと聞いていて、アドバイスまでくれたが、その後の男の豹変に驚かされる。
そして、あくび男に車で屋敷につれていかれて殺人の手助けをするよう促される。それはデュバルが聞いた盗聴テープの内容にあった人物だった。自分が完全に事件に巻き込まれ、後戻りできなくなっていることに気づく。
主人公を演じたフランソワ・クリュゼは、「最強のふたり」(2011)で首から下が麻痺してしまった富豪の男である主人公を演じていた。「最強のふたり」は東京国際映画祭の最高賞サクラグランプリに選ばれ、クリュゼも共演者とともに最優秀男優賞を受賞した。
「最強のふたり」は見たことがあるのだが、盗聴者を演じた人物と同じ俳優とは気が付かなかった。ちょっと表情が ダスティン・ホフマンに似ていると思った。
当作品は、無料動画サービスGYAOで5月31日まで配信中。劇場未公開作品ながら、とても面白く鑑賞できた。もう少しで配信が終わってしまうので、ぜひ視聴をお勧めします。