「打撃王」1942年 アメリカ 原題:The Pride of the Yankees
 

小さいころに、よく空き地で野球をやって遊んだわりには、野球観戦にほとんど興味がない。たまに見るのは甲子園の高校野球を青森の実家に帰ったときに観るくらいだ。

漫画やアニメは「巨人の星」が好きでよく見ていた。あんまり話題にあがらないけど貝塚ひろしの「父の魂」という漫画も大好きだった。

そんな野球に興味がないぼくでも、ものすごくホームランを打った(引退時に本塁打714本)ということでアメリカのベーブ・ルースの名前は知っていた。サム・ウッド監督の「打撃王」をDVDで見ていてやけにベーブ・ルースに似ているそっくりさんが出ているなぁと思ったら、なんと本人だったのには驚いた。この映画には、本人役で5人も出演している。

映画のストーリーはヤンキースで活躍した野球選手ルー・ゲーリッグの人生を描いている。最初は母親の希望通りに進学してエンジニアになることを望んでいたのだが、大学での野球の実力をかわれて球団ニューヨーク・ヤンキースにスカウトされたことから、人生が変わる。

奥さんとの出会いが面白い。
ゲーリッグは、急に代打に指定されたときに、あわててグランドに並べていたバットに足をとられてすべって転んでしまう。後で奥さんとなるエリナーが「ブカッコウね」と笑ってやじると、それが他の観衆も気に入って「ブカッコウ野郎」が彼の呼び名として広まってしまう。

でも、その後でエリナーと食事をするさいに、足を引っかけて彼女がテーブルの前ですべって転んだら「ブカッコウだ」と、彼が言い返すところが面白い。エリナーはゲーリッグを睨むが悪意なき彼の笑顔につられて彼女も笑ってしまう。

ゲーリッグは連続試合出場記録を更新し、スポーツプレーヤーの枠を超えて絶大に支持されるアメリカの国民的英雄となった。でも、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)の病気が元で37歳の若さで亡くなる。

映画にもシーンとして出てくる彼の引退スピーチ。「ファンの皆様、ここ2週間に私が経験した不運についてのニュースをご存知でしょう。しかし、今日、私は、自分をこの世で最も幸せな男だと思っています。(中略)私は神の祝福を受けたのです。比類のない強さを持ち、考えていた以上に勇気のある女性を妻に出来たことほど嬉しいことはありません ……つまりは、私を不運だとおっしゃる方もいるかもしれませんが、数え切れないほど多くの人々からの愛情を受けている私の人生は本当に幸せなものなのです。……ありがとう 」がこころに残る。

野球の映画なのに、あまり野球のシーンはなくて家族と奥さんとの愛情あふれる暖かな幸せな時間をかんじさせるドラマだった。また、ゲーリッグを演じるのはゲーリー・クーパーで映画評論家の淀川長治は彼の代表作であると、自著で紹介している。