明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします。

今年は、上の絵のように鉛筆画にチャレンジしていきたいと思っています。

ところで、もう仕事が始まって3日経ってしまい、正月気分でのんびりしていた日々も嘘のように通り過ぎてしまった。

● アイデアを取った不届きな奴・・・
正月の映画といえば、邦画の世界では1980年代~1990年代に山田洋次監督、渥美清主演の”「男はつらいよ」シリーズ”という時期があった。

その「男はつらいよ」の原案は、実は『ヤクザから俳優になった安藤昇が提供者である。』
というのをブログで読んでとても驚いた。思ってもいなかった。

山田洋次監督は、安藤昇主演の松竹作品『望郷と掟』(66年)に助監督としてついていた。安藤は山田のことが気に入っており、自身の企画の監督として推薦したり、アイデアのプロットを渡して脚本にしてほしいと頼んだりしたのだという。

そのときのアイデアが、「ヤクザが市民社会の中に入っていって、騒動と笑いを引き起こす」というヤクザ喜劇だったが、一ヶ月後、山田洋次は「書けません」と断った。しかし、その後フジテレビでドラマ版『男はつらいよ』が始まった。

フーテンの寅次郎はテキ屋であり、いわゆるヤクザの一種である。プロットを盗用されたと感じた安藤は怒ったが、表沙汰にはしていなかった。

「山田洋次に会ったら、あいつを締め上げなければいけないところだ」と語っているが、一方で「俺のアイデアを取った不届きな奴だが、才能はあるよ」とも賞賛もしている。

● 南野陽子がバーのマダム
ぼくが安藤昇という俳優に関して持っているイメージは、そんなに良くない。

まず、元ヤクザがヤクザの役をやって一番リアル感をだせるだろうというそんな単純な想定を彼の映画界への起用は思わせてしまう・・・・そんなに簡単なものではないだろう。現に映画の中での彼を初めて見た瞬間に抱いた感想は、演技に奥深さを感じさせずどこか素人臭いということだった。

独特な目つきで、怖っぽい雰囲気を持っているとしても、あまり観たいと思わない俳優だった。

その安藤昇に「男はつらいよ」のエピソードが元で興味を抱き、近所のゲオで梶間俊一監督の「安藤昇自伝 渋谷物語」(2005)という、DVDをレンタルして観た。本人も映画の最後に特別出演している。



しかし白いスーツは着ているもののもうほとんどおじいちゃんの状態で、「この付けたしのような1,2分程度のシーンはいらなかったのでは?」と、思えた。

残念ながらあまり観るべきところのなかった作品としかいいようがない。ヤクザから俳優にどのようなきっかけでなったのか、そこを映画に入れてほしかったのだけど、それ以前の戦争帰りからヤクザとして生きていた頃の内容に終始していた。

ヤクザ時代の内容でもいいのだが、頭で考えたイメージをそのまま画面に投影しただけのようで、安藤昇自身は、劇的な人生を送った人なのに、映画がこんなに平凡な作品になっているのは、残念なことだ。

南野陽子がバーのマダムで、安藤の女である役を演じているが、それも世間的によくある水商売の哀しいイメージをそのままなぞっているようにしか見えない。主役の村上弘明は、顔がハンサムすぎてあのヤブ睨みの印象が出ていない。

● 三船を蹴り飛ばし
ところで今回レンタルした映画は別として、安藤昇のエピソードは実に興味をそそられる。たとえば、黒澤明の映画で世界的に有名なスター三船敏郎との話。

ある日、三船敏郎と安藤は飲みに行くことになるが、早々にベロンベロンに酔ってしまった三船が何の理由もなく、初対面の安藤の顔をバチーンと殴ってきた。三船は、酒癖の悪さでも知られ、飲むと性格が一変した。

頭に来た安藤は思い切り三船を蹴り飛ばし、そのまま殴り続けて、半殺しの目にあわせてしまった。道で気絶している三船を残して安藤は帰ってしまった。三船は、翌日に派手に顔が腫れたせいで当時撮影していた稲垣浩監督の映画『宮本武蔵』(1954)は、1週間撮影が延期になってしまったという。浜美枝は、三船について「お酒さえ入らなければ、本当にやさしくていい人なんですけどねえ」と語っている

なお、この映画は完成後、アカデミー賞外国映画賞を受賞したとのこと。

アカデミー賞を受賞する作品のスター俳優を半殺しにしてしまう安藤昇のエピソードは、まさに劇画的な人生で、彼の半生をモデルにして作られた漫画がヒットしたのもうなずけるところ。

安藤昇の実録映画はぜひ、実力のある監督に再チャレンジしてほしいものだ。また、どのように俳優になったのかということの詳細は、彼の著作をいつか読んで知るということを自分の楽しみにとっておこうと思った。