≪ 「ハルオサン「警察官をクビになった話」より ≫
 

ハルオサンというペンネームの人のマンガ本を読んだ。タイトルは「警察官をクビになった話」。

マンガと言うには、実に変な絵だ。もし雑誌の中に入っていたら・・・パッと見だけで判断してすぐに別のマンガ家の作品に目移りしそうな地味な印象だ。マンガと言うよりは、絵本のような味わいでイラストマンガとも言えそう。


パッとしない絵とは別に、文章がうまいし、場面場面での会話の差し込むタイミングがうまい。さらにそこに描かれた事実が筆者の実体験なので、心をえぐられるような力を持っていて、読んでいるとぐいぐい惹きつけられてくる。


そのストリーは、警察学校での集団生活の始まった3月末の季節から始まる。ペンネーム「ハルオサン」は、まだ18歳で、学校では「初任科長期過程」を受講している。教官からこのような言葉が出る。

「あー昨日・・・さっそくだが・・・一人やめてもらった」
「もう荷物まとめて出ていったぞ」
「遠慮はいらん ドンドンやめてくれ~ 警察官にばかはいらん」
「俺たちは一切容赦なくおまえたちをやめさせるからな」


何か時代遅れの軍隊のような雰囲気だが、その感じた通りに徐々にひどいいじめのような現実が描かれていく。やがてハルオサンは、教官に呼び出され、こう言われる。
 

「おまえ、警察官をやめてくれないか?」
彼はひたすら懇願する。
「もっ申し訳ありません・・・あっっあの・・・もっ・・・申し訳ありません!!」
「一生懸命・・・がんばりますので・・・」


ひたすら頭を下げ続けたのだが、教官は追い打ちをかけるように彼のダメな点をあげていく。


「ロッカーの鍵 締め忘れたな?」
「最近は忘れ物も」
「声が小さい 覇気がない」
「誤字が多い」
「シャツのシワ 靴の汚れ」
「仲間とうまやれているか? 細かいミスが多い」
「それでも警察官か? それで国民の命を守れるのか?」


どこで、何が原因でハルオサンをやめさせる方針が警察の組織内で固まってしまったのかは、不明のままだ。その状況の中でただひたすらハルオサンは、部屋に呼び出され、辞めることを強要させられる。 


しまいにハルオサンは自分に対する評価をこのように表現するまでに至り、自殺まで考える。

「・・・教官は私がつらそうにする度によく笑った」
「私も私を笑った だんだん 私は人間ではなくなっていった」
「教官のお話を毎日聞き続けたことで 私はちゃんと理解した・・・ 自分は無能で生きる価値のないゴミだと」
「人間になり損ねて生まれた失敗作だと」


実はこのマンガを最初に読んだのは、本人のブログだった。1日で200万PVを記録したという伝説的なマンガとして知られていた。本屋さんでブログのマンガが本になったのを見て、ブログとはまた違う絵柄で描き直していて、エピソードも新しく入れているのがわかったので購入した。


マンガのお決まりの表現方法を突き抜けている部分もあり、一つの新しいマンガの可能性をみせてくれている。


参照:警察官クビになってからブログ