ものの見事に、登場人物が社会からはみ出して酒に頼るしかないような、底辺の人々で固められている。ファティ・アキン監督の映画「屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ 」は、5年間で4人の娼婦を殺害した連続殺人鬼、フリッツ・ホンカの事を描いている。

主人公は、夜な夜なバーに入り浸っては酒を浴びるように飲み、そこに集う女たちを物色している。そしてくたびれたかけた魅力に乏しい中年女性をひっかける。すると、その男の顔を見たその女性から「不細工すぎて勘弁よ」「あんなブ男、おしっこをひっかけるのも嫌」と毒舌を吐かれる。この印象的な場面が予告編に出ていた。

主人公も、その兄も下品にかけては負けておらずなかなかのゲスぶり。確かこんな乾杯で酒を飲み始める。「俺たちに股を開かない女に死を!」。この乾杯方法・・・・・・、ちょっと面白いのでためしてみたい気もするが。映像は主人公の無意味な怒りと、中年娼婦を死にいたらしめ切断する殺伐とした暴力を延々と描く。

その中で一人の女学生がでてくる。フリッツ・ホンカとはほとんど関わりのないのだがその女性だけは殺人鬼にとって女神のような存在。映画の中でそこだけが温かみのある光景だった。

やがて映画は終わり、前の列の若い女性二人がたがいの顔を見つめ合っていた。出てくる感想は「グロかったね!」だと予想したのだが、出てきた言葉は「面白かったね。」というすばらしい感想。ぼくと同じではないか。一緒に彼女達と映画の感想を肴に酒でも飲みたいと思ってしまった。

そして、この映画はあまりに下品な人と言動が多いので、「普通の女性がとても綺麗にみえてくる」という感覚の副産物がついてくることに気がついた。これは川崎の工場に、深夜専用で女っ気なしで長期間のバイトをしていたときに感じた事と同様であることを思いだした。

「世界で一番下品な人間」の座を争うという内容で、非常に低予算で作られた作品「ピンク・フラミンゴ」の監督のジョン・ウォーターズのコメントが面白い。
『この役を演じた勇気を称賛する。作ったファティ・アキン、恥を知れ!今年のベストに入れた自分も恥を知れ!この映画を気に入ったって?そんなあなたも恥を知れ!』