ジェイ・ローチ監督の「スキャンダル』は、ニュース専門のテレビ会社のお偉いさんによるセクハラをテーマに描いている。だからシンブルに禿げて太ったエロじいさん「ロジャー・エイルズ」の好き勝手な行いにカツを入れる女性ニュースキャスターの活躍、もしくは復習劇を物語にしたものだと考えていた。

その想像と実際の映画の話しはちよっと違った。トランプ政権など、アメリカの政治の話しが絡んでいる。逆にそこに時間を割いたためか、セクハラ男への嫌悪感が薄れてしまったように感じた。

ドナルド・トランプのセクハラ発言が、何個かでてくるがそっちのほうがインパクトがあった。
映画は、アメリカでドナルド・トランプ大統領が誕生する手前までを描いている。

トランプは2005年にこんな発言をしたことが録画で残されていたため、、米紙ワシントン・ポストで報道されニュースになっている。

「きれいな(女性に)自動的にひきつけられ」、「いきなりキスしだすんだ。ぜんぜん待たない。それにこっちがスターだと、向こうはやらせてくれる。何でもできる。pussy(女性器の俗語)をわしづかみする。なんでもできる」

このセクハラ色の強い言を拾いだし、トランプを女性キャスターが攻撃する場面が映画で表現されている。町山智浩氏がラジオでこのように紹介していた。

トランプがその頃、女性差別発言を次々としていたんで、メーガン・ケリーは個人的に怒っていたんですよ。「この男、許せない!」って。で、その時にメーガン・ケリーがトランプに追求したのはまず、「あなたは『ブスとデブとのろまな女は嫌いだ』って言いましたね? これはひどい女性差別ですね」と。そしてもうひとつはすごく有名な発言で。「私はセレブだから女性のオマンタをいきなり掴んでも許されるんだぜ」とかって言っていたでしょう?

その後、トランプはツイートして「メーガン・ケリーは怒り狂って目から血が出そうだった。たぶんあそこからも出ているぜ」とか言ったという。

このトランプのキャラが出てきて、エロじいさん・ロジャー・エイルズの影も僕の中では薄れてしまった。

セクハラシーンも何かものたりなかった。『あまりそのシーンを過激にすると、男目線になってしまう』と脚本家は考えたようだけど、やるときはおもいっきりいかないと逆に物語が生ぬるいもんになってしまう。そもそも、女性ニュースキャスターは、相当な屈辱を受けたから自分の仕事がなくなるのも覚悟で、訴訟に踏みこむのだから。

ニコールキッドマンとシャーリーズセロン演じる二人の女性ニュースキャスターが髪型以外に顔と雰囲気がそっくりなのも気になった。映画を見ててどっちがどっちだかわかんなくなって、混乱してしまった。ということで、ぼくにとっては映画の印象はやや薄めだった。

でも、このようについ最近のニュースを訴訟覚悟ですぐに映画にしてしまうところがすごいと思った。また、映画の舞台となっているFOXニュースに関しても町山氏の映画説明を聞くと、興味深い動きがたくさんあることがわかってくる。「スキャンダル」を見て、マスコミ業界の世論操作に対する興味の一歩となった面は良かったかも・・・。

参照:町山智浩『スキャンダル』を語る