NHK連続ドラマの「おしん」は、ドラマ史上最高の平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%をたたき出した名作。世界73の国と地域で放送され、イランでは最高視聴率90%を超えたという。昨年の4月からBSで再放送されていて、ぼくも妻といっしょにテレビ録画をして見ている。
今は乙羽信子のおしんになっており、どうみても小林綾子、田中裕子のおしんのときのほうがドラマに勢いがあつて面白かったのだが、それでも最近のドラマよりは内容に深みがあり惹きつけるものがあるので、継続して見ている。というか、おしんを見た後では、今のNHK連続ドラマや他の日本ドラマのご都合主義的な生ぬるい展開にあくびが出てしまうのだ。
ところで、「おしん」の今週は十数年経過したという設定で月曜日から続きが始まった。驚いた事に主人公のおしん・乙羽 信子と昔の恋人を演じた渡瀬恒彦のみを残して全員役者が代わってしまった。
これはまた困ったもので、出演者に対するそれなりのイメージが消された形なので、まるで今から新しいドラマを見ているようなものになってしまった。気持ちがドラマからかなり醒めていく自分を感じた。
ドラマで何年経過しても20代の役者が老けたメイクもせずにで続けるのも不自然過ぎて引いてしまうが、このおしんの方式はさらにドラマから気持ちが離れてしまう。しかしあと1か月でドラマは終わるので、「何はともあれ、最後まで見届けよう」と、うちの奥さんとは言っているのだが。
ところで、おしんにまつわる疑問がぼくの中にはひとつある。国民的ドラマと言われる「おしん」に出演した俳優や女優は「おしん」に関しての感想を述べている。特に、10歳で出演したという小林綾子は、インタビューを何度も受けていて記事が何個も出ている。ところが、肝心の田中裕子の「おしん」にまつわる発言がほとんどない。
そのヒントとなることが、脚本家の橋田壽賀子(はしだ・すがこ)の記事からうかがえた。
その記事は作家の林真理子が橋田壽賀子にインタビューする形で記事が構成されている。橋田壽賀子は、友達はいらないと答えていたり、小説はめんどくさいと考えていたり、なかなか面白い人なので、一部抜粋していきたい。
橋田:お友達って何ですか? 拝見すると、真理子さんはお友達と一緒にどこかに行ったりなさってますけど、私はベタッとしたのがイヤなんですよね。お友達がいないというのは、すごくさわやかです。
林:そこまで言いきれたら素晴らしいですよ……。
橋田:「それは負け惜しみよ。あなたは友達をつくれる人じゃない。意地が悪いから」ってよく言われますけど、でも、ほんとに欲しくないんです。私は一人っ子だったから、可哀想に思って母がうちに友達を呼ぶんです。お菓子やノートや鉛筆を母がくれるから、みんな寄ってくるんですけど、そうやって母が私を抱え込むのがイヤで、18歳で家を出ちゃって、それからずっと一人で暮らしてきました。誰からもお金をもらわないで、自分で稼いで、日本女子大へも自分のお金で行きましたし、そのあと早稲田も行きました。
林:どうやってお金を稼いでいたんですか。
橋田:少女小説を書いて稼いでたんです。小糸のぶさん(小説家)がその当時の先生でした。漫画の原作も書いてました。
林:そのまま小説家になろうとは思わなかったんですか。
橋田:思いません。面倒くさい。セリフだけ書いていたいんです。
林:先生はご自分が書いたセリフを一回言葉に出したりします?
橋田:しませんね。
林:口に出したら言いづらかったということありませんか。
橋田:「書いたとおりにちゃんと言え!」って言います(笑)。俳優さんに対する思いやりがまったくないんですよ。
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林:「おしん」が大ブームのとき、NHKに行ったら田中裕子さん(成長したおしん役)がいたので、ちょっと会釈したら、無視されたというか、あのとき精神的にギリギリ追い詰められていて、まったく余裕がなかったみたいでした。
橋田:そうなんです。あとで聞いて謝りました。セリフは長いし、あの役嫌いだったんですって。はっきり言われました。でも、わかります。あの人の中にああいうおしん的なものはまったくないんです。マイペースな方ですからね。役にすごく抵抗があったみたい。それはよくわかります。
参照:橋田壽賀子、友達は「ほんとに欲しくない」 断言するワケ
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