『おっさんずラブ』というオヤジと青年が好きになったり、なられたり・・・・というヘンテコなドラマを見て、その面白さに一瞬だけはまった。あるシーンで、青年がおいしそうにパフェを食べていた。
『男だったら、パフェーは合わないだろう!』なんてゆう考えは浮かばなくて、それが何気においしそうだった。甘いものを食べると頭痛がひどくなるぼくとしては、なんともうらやましいシーンであった。
そこで、ふと思い出したのは先日みたマーティン・スコセッシの「アイリッシュマン」という映画。
アルパチーノは現在79才だが、とても声も大きく元気にアメリカ労働組合の指導者であるジミー・ホッファ役をイキイキと演じていた。そしてそのジミー・ホッファは、パフェが好きらしく何度か映画の画面にアルパチーノのパフェーを食べるシーンが画面一杯に映された。
ところが、こちらは美味しそうに見えない。老人の男がムシャムシャスプーンでアイスを口に放り込んでいる絵が、どこかげんなりさせてしまうのだ。
そしてこの映画は食べるシーンが多い。その食べるシーンのどれもがリアルすぎるのかなんなのか、口をくちゃくちゃする咀嚼音まで聞こえて耳障りでパッとしない。
76歳のロバートデニーロという名優も出て、ある意味、とても豪華な映画なんだろうけど年を取るというのはしんどいもので、何気ない日常の絵から美しさは遠ざかってしまっている。
この映画は美しさがどうこういう内容ではなくて、『第2次世界大戦後のアメリカ裏社会を生きた無法者たちの人生を、ひとりの殺し屋の目を通して描いた力作』と、紹介されている。でも、ぼくの頭の中に残ったのは、デニーロ演じる親友を殺すはめになった殺し屋の悲劇よりも単純に、”老いと食べる事”が印象に残った映画になった。
監督のマーティン・スコセッシの作品は特別に好きな作品が多く、「タクシードライバー」、「 ケープ・フィアー 」、「ヒューゴの不思議な発明」など誰もが真似できない高レベルの映画を見せてくれる。でも今回の映画は3時間という上映時間が長すぎると思ったし、心に響かなかった。
今度はぜひ若い俳優が主人公の映画で勝負してほしいと思った。
