「ジェミニマン」2019年 アメリカ 原題:Gemini Man


マスコミの取り上げ方がすごいアン・リー監督の「ジェミニマン」を観に行った。


アン・リー監督の2012年の作品、「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」は、とても好きな
作品だったので、期待も高かった。でも、「ジェミニマン」は観終わった後で、「あれ?こんなんでこんなに騒がれてたわけ?」と疑問に思った。


政府に依頼された狙撃手ヘンリー(ウィル・スミス)は、走っている列車に乗っているターゲットも一撃で打てるほどの腕を持っていた。しかし、51歳にして衰えを感じ引退を考えていた。ところが、政府からのミッションを遂行中にヘンリーは、自分と互角の実力を持つ若い殺し屋に襲われてしまう。顔を見ると自分にそっくりだった。その男はヘンリーの軍人時代の友人だったクレイによって、兵士として育てられた23歳のヘンリーのクローンだった。


この映画はストリーより、映像を観る映画とも一部で言われている。


映画評論家の前田有一氏によると、本作は毎秒24コマのフィルム時代から続く「映画らしい質感」をかなぐりすて、毎秒120コマ、4Kの3Dカメラで撮影されているとのこと。アメリカにも台湾にも上映できる設備を持った映画館がどこにもないという、時代の先を行き過ぎた仕様になっているという。
 

日本では埼玉県のMOVIXさいたま、大阪府の梅田ブルク7、福岡県T・ジョイ博多で、監督の意図に近い上映がされるという。
 

ハイ・フレーム・レート(HFR:High Frame Rate)3Dを監督は、「人間の目で見る感覚」を再現するために使ったという。ということは、それを効果的にみせることのできる映画館ではないと意味がないことになる。

しかし、そのような設備をそろえていない映画館でも上映されているので、やはりこの盛り上がりに欠けたストリーは、「かなりつらいなぁ」と思った。現にぼくのように3D映画が嫌いだと、2Dで「ジェミニマン」を見て結果的に、かなり眠くなってしまうのだ。


但し、若い23歳のウィル・スミスと、51歳のウィル・スミスがお互いバイクで戦うシーンは迫力があった。このバイクバトルは、カンフーならぬ「バイフー」と名づけられたそうだ。


そもそも51歳のウィル・スミスは体も鍛えておりスマートで、顔もそんなに老けてはいないので、28歳のウィル・スミスとは親子というよりは兄弟のようにぼくには見えてしまった。逆に若いころと比べてずいぶん変化の激しく年を取った人のほうが、並べてみたときのギャップが映画として効果的なのかもしれない。


映画のなかのジュニアこと23歳のウィル・スミスは、WETAデジタルが創り出したフルCGのキャラクターだ。ウィル・スミスは23歳のジュニアに関してこのように語っている。


「ジュニアはいわば『ライオンキング』(19)のライオンたちと一緒だ。100%CGのキャラクターだよ。こっちは人間でそれをやってのけたわけだ。いやはや、本当にすごいよ。俳優にとっては、自分の分身ができたようなものだからね。今度はCGの僕にも仕事をしてもらおうかなって思うくらいだ。”太らなきゃいけない役が来たよ、お前が代わりにやってくれ”なんてね(笑)」
 

ところであと何年かしたら、スマホやパソコンで、この映画のようにCGで若い自分の3Dが作ることがもっと簡単になるのだろう。いや、自分だけではなく、3D映像で亡くなった芸能人や自分が学生時代に好きだった人も年齢指定で自由に再現できるようになるのだろう。などと考えると、この映像によるクローン技術の進化は映画のみならず、色々、幅がひろがっていきそうだ。

参照:超映画批評『ジェミニマン』80点(100点満点中)
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