
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」 2019年 アメリカ
クエンティン・タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を日本での公開初日に観た。2時間40分という長めの映画だったのでちょっとしたら退屈してしまうのかとも、思ったがそれはなかった。でも『2時間に収めてもらったほうが内容が充実していたかも?』と、思った。
基本は俳優とそのスタントマンの友情を柱にした物語なのだろうけど、物語の中に友情を感じさせる場面は少なかった。どこかピントがずれている感じがした。
むしろ、ブラッド・ピットが演じるスタントマンのクリフ・ブースを中心にしたストーリーにしてほしかった。彼の掴みどころのない暴力的な男の不気味さとユーモアさを前面に出したほうが面白かった。暴力で奥さんを殺して刑務所に入っていた過去を持つ男のクリフは、落ち目で悩んでいる役者のリック・ダルトンより実在感があった。
それは、「シャロンテート事件」を元にした最後のアクション場面が一番確かな手ごたえのある映像だったことからも言える。このアクションをクライマックスにするには、スタントマンのクリフを主人公にしたほうが活きたはずだ。
この映画で、一つきにいらないことがある。ブルース・リーが出てくる場面があり、彼がどこか一人よがりのオバカなイメージなのは気にくわない。それに、中途半端に似たチンケな俳優にやらせることはない。もう少し本人に似た重厚な演技と雰囲気を持つ俳優はいなかったのか?
これでは、ブルース・リーの娘、シャノン・リーが文句を言うのもわからんでもない。彼女はThe Wrapとのインタビューで、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』におけるブルース・リーの描写が「不愉快」で人々を「ガッカリさせる」もので、彼女の父が「嘲笑的」に表現されたと主張。
タランティーノ監督は、こう弁明。
「ブルース・リーはもともと、ある意味で傲慢な人間でした」
「私は勝手にブルース・リーのイメージをでっち上げたわけではありません。実際、彼がそのようなことを言っているのを聞いたことがあります」
最終的に監督は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が結局はフィクションであるという主張で自分の作品を擁護した。
「クリフはブルース・リーを倒せるのでしょうか? ブラッド(ピット)はできないでしょうが、クリフは倒せたのかもしれません。例えば、もしブルース・リーとドラキュラが対戦したら、どちらが勝つかというのも、同じような質問です。結局架空のキャラクターなのですから」
でも、なんと言おうと、この映画での描かれ方は全世界のブルースリーファンを本当にガックリさせた場面だ。なおこの展開には、ブラッド・ピットも心配していたとの事。
参照:タランティーノ監督、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』における“傲慢”なブルース・リーに対する批判に反論