「アラジン」 2019年  アメリカ   原題:Aladdin


週刊文春の書評の「今週の必読」という欄を読んでいた。
 

”ため息がでるほど素晴らしい本である”と、小倉ヒラクの本「日本発酵紀行」を作家の高野秀行が評していた。ぼくは「なんてゆう誉め言葉だ!」と、感心してしまった。こんな誉め言葉をもらえたら、作者も本望であろう。


同じように『ため息がでるほどにファンタジー溢れる傑作映画である』と言いたくなってしまうのが、ガイ・リッチー 監督の「アラジン」。
「千夜一夜物語」の「アラジンと魔法のランプ」に基づき日本で1993年公開のディズニー人気アニメーション映画「アラジン」を実写化した。


映画の冒頭のアラジンのタイトルからして凝っている。アラジンの金色の文字の一部分がまるで砂のように、サラサラと崩れ落ち風に舞う。その効果がいろいろなタイトル文字に適用されている。映画が始まってそうそう、ぼくの好みに直撃する映像の凝り方に嬉しくなってくる。


さらに、歌もダンスもインド映画のように優れていて、ダンスには現代的なアラジンのブレイクダンスも入っている。主人公・アラジンの自分を追う人々を交わしていくアクションも、ジャッキーチェンのような動きで飽きさせない。そして魔法の絨毯に乗って空間を移動していく爽快さ。


● 行き詰まっていたんだよね。
また、当映画でウィル・スミスを見直してしまった。
彼が演じる魔法のランプから登場する魔人ジーニーのテンポのいい動きと楽しそうなノリノリなおしゃべり。彼を見ているだけで元気が出てくる。
 

見るからに楽しそうに演じているが、実はウィル・スミスにとって「アラジン」は重要な意味を持った作品だったことが彼の発言から気づく。「アラジン」の記者会見で、ウィル・スミスはこのように語った。

「行き詰まっていたんだよね。僕は、自分が人生でできること、キャリアでできることというものをいつも考えてきたのに、それが尽きてしまったように感じたんだ。人生、創造力が崩れていっているような。それで、2年休むことにしたのさ。主に、勉強するため。それと、心の旅のために。『アラジン』は、そこからの復帰作。これをやってみて、自分にはまだ演技への情熱があるのかどうかを確認しようという気持ちが、僕の中にはあった」。


また、ウィル・スミスの歌がとてもうまい。『本当に本人が歌っているの?』と、うたがいたくなるほど。

実は俳優としてデビューする前に、彼はラップミュージシャンとしてエンタメ業界に足を踏み入れているとのこと。彼は一周して自分の原点に立ち戻ったと言える。それも、50歳という節目の年に。


● 5週連続で首位を獲得
ウィル・スミスの大活躍もあり、多くの人がアラジンの世界にはまったようで、5週連続で映画は首位を獲得した。新作が次々と封切られる中、落ちの少ない安定した興行を続けており、累計では間もなく動員が600万人、興行収入が86億円に届く勢いとのこと。


客も入るし映画として、文句ないところではあるけれど、一つ欲を言えば、物語の展開が想定内なところか。


子供に夢を与えることがディズニーの大きなコンセプトの一つだと思うから、ぼくがたまにチョイスするとんでもなく絶望的な人間性の描写など望むのは筋違いなのはわかっている。それはわかりつつも、悪役にもう一振りの毒を足してほしいところだ。
 

アラジンの作品の世界に大きく酔いつつも、後半の4分の3あたりで、ふいにぼくは眠ってしまった。これでは『ため息がでるほどに』などと評する資格がない。しかし、観たのはいつもの金曜日のナイトシアターでそれも遅い夜10時にスタートだった。なので、仕事で疲れすぎていたのかもしれない。
 

明けて月曜日。アラジンの感想を「とてもいい作品だったよ。」と、友人にすすめた手前これはもう一度、同じ映画にチャレンジする必要がある。眠ってしまったのは仕事の疲れなのか、作品としての中だるみなのか・・・・。

参照:「アラジン」で個人記録更新。50歳のウィル・スミスが経験した、良い時、悪い時
   映画興行成績:「アラジン」がV5 「Diner ダイナー」は3位発進…
PR:幸せのちから [Blu-ray]