今月で60歳になったぼくは、某電機会社を定年となる。というわけで、会社から2万円まで好きな記念品を選んでいいよ。と言われて選んだのが、昔のモノクロ時代からの古い名作映画集。3点のベスト集のセットを選択した。


「アカデミー賞 ベスト100選 DVD50枚組(収納ケース付) セット 1」 と、
「アカデミー賞 ベスト100選 DVD50枚組(収納ケース付) セット 2」と、
「サスペンス映画コレクション 名優が演じる非情な世界 DVD10枚組」
という合計110枚のDVDを選んだ。値段も合計で2万円弱になった。


普段のすさんだ精神生活を、名作を見ることによって浄化したい。また、60歳まで働いた会社からの『夢物語の楽しみ』のプレゼント、200時間弱と思えば、感慨深いものになるというもの。よっぽど心にひびかなかった作品は除くとして、基本見た順に感想をのべたいと思っている。
 

「幻の女」 1944年 アメリカ 原題:Phantom Lady

 


女性(エラ・レインズ) と 男性(フランショット・トーン)

   

それで、まず見たのがロバート・シオドマク監督の「幻の女」。「幻の女」というタイトルがまず惹かれる。いかにもそこにドラマが潜まれている期待をタイトルがもたせてくれる。


スコットは、妻と喧嘩をし、家を出た。バーにて、帽子をかぶった変わった女性に惹かれて、彼女を誘ってショーを観に行く。そして、家に帰ると警官がいて、妻が殺されていた。いつのまにか彼は犯人にしたてられていた。唯一の証人となる帽子をかぶった女性を求めて、探すのだがまるで彼女の存在などなかったかのような証言が集まる。スコットの秘書キャロルは、事件に懐疑的な警部と、スコットの親友の協力を得て、“幻の女”の足取りを追うのだが……。


ところでその「幻の女」が、映画ではぼくにとって残念なキャスティンング。スタイルはいいのだが、あまり気持ちをそそられない容貌で、もう少し夢をもたせてくれる女性に設定してもらいたかった。年もとりすぎている。


但し、その分、殺人の汚名をきされた主人公の無実を信じて色々調べてくれる彼の秘書キャロル・リッチマン(エラ・レインズ)がとても魅力的だった。エラ・レインズは、同じ監督の作品で「容疑者(1944)」などにも出演した。

ぼくが好きなシーンはドラムのシーン。事件に関係があると思われる、小柄でサル風貌のあまりさえない容貌だが、この人がやたらドラムがうまい。E・クック・Jrという。秘書キャロルが彼から、情報を聞こうとして近づいた。ドラマーは仕事帰りに寄ったお店で、またドラムを力いっぱい、好きなように叩く。
 

そのドラムのシーンが妙な雰囲気。映画のあらすじなど吹っ飛ばし、とにかくドラムを叩くことに異常なほどの思い入れで続ける。秘書キャロルはドラマーから情報を聞こうとして、商売女に扮装して近づいたわりに、その演奏に陶酔したように、音に乗って踊っている。彼女も何か目的を忘れたかのような表情。音楽の魔力のようなものが、それぞれの事情を跳ね返していた。

そもそもこのドラムのシーンはどのような意図だったのか、知りたいと思った。


捕まった男の友人が、両手を眺めながら、ドラマーを追い詰めていく言葉も印象に残る。
「手とはおもしろいものだな。ピアノで曲を奏でたり、粘土で芸術作品を作ったりできる。死にそうな子の命も救う。でも恐ろしくもある。破壊したり、拷問したり、殺したりする。」そして、相手をじっとみすえるそのキャラが興味をひいた。


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