◎ 「レディ・プレイヤー1」 2018年 アメリカ
原題:Ready Player One 
監督:スティーブン・スピルバーグ
脚本:ザック・ペン
出演者:タイ・シェリダン、オリビア・クック、ベン・メンデルソーン、リナ・ウェイス


いまから27年後の世界。人類はゴーグル1つでなりたいものになれるVRワールド[オアシス]に生きていた。ある日、オアシスの創設者からの遺言が発表される「全世界に告ぐ。オアシスに眠る3つの謎を解いた者に全財産56兆円と、この世界のすべてを授けよう」と。56兆円をめぐって、全世界の壮大な争奪戦が始まる。 

 

● オープニング記録で初登場1位
「レディ・プレイヤー1」は、過去10年のスピルバーグ監督作史上No.1のオープニング記録で初登場1位を獲得し、世界各国でも大ヒットを記録しているという。

 

映画の冒頭で、すぐにゲームの仮想世界に入り込んだ場面になる。聞き覚えのある大友克洋(おおとも かつひろ)のマンガ「AKIRA」の金田のバイクも出てきて、さらには都市をキングコングが暴れて危険地帯そのものにしている。そんな光景の中でのレースの場面、このシーンはアイデアとビジュアルがずば抜けていて、夢の世界に入りこんだかのような興奮を得られる。

 

ストリーはさておき、『スピルバーグは、新しい空想の世界に誘うとんでもない映画(映像)をつくってくれた!』と、喜々として画面に見入った。そのような感動を映画の前半で何度か味わうことができたが、ぼくの印象では、後半が失速してしまった。
正直、ちょっと退屈してしまったのだ。

 

● 「サタデー・ナイト・フィーバー」と「シャイニング」
但し、空間でダンスする青春映画の「サタデー・ナイト・フィーバー」のダンスや音楽の引用は懐かしく楽しかった。この映画の大ヒットで、ジョン・トラボルタは世界的に有名なスターとなったことが思い起こされた。

 

それと古典ホラーの名作でスタンリー・キューブリック監督「シャイニング」の引用なども、驚いた。当時、「シャイニング」は見たものの、ほとんど興味をひかれなかった。
こうして何十年かぶりに別の映画で出会えるとは思わなかったし、引用場面を過去に見たことを自分が覚えていたことが意外だった。

 

意味ありげな双子の女の子や、ドアからあふれんばかりに流れ出るどす黒い血の色をした液体などが、ぼくの過去の映画の場面の記憶を呼び起こした。再度、「シャイニング」を見直したい、ジャック・ニコルソンの狂気に満ちた表情も、もう一度見たいと思った。

 

● 1980年代へのオマージュ
4月19日に、13年ぶりに来日したスピルバーグ監督に1980年代へのオマージュに関して
話を聞いている。ここでの監督の発言が映画のテーマ―に関する重要な発言になっている。
以下、その発言を抜粋していきます。

 

-本作には、1980年代へのオマージュはもちろん、『シャイニング』(80)、『市民ケーン』(41)、『素晴らしき哉、人生!』(46)、そして三船敏郎と、監督自身がお好きな古い映画もたくさん引用されていました。80年代とこれらを混在させた理由は?

 

まず、私は80年代が大好きなんです(笑)。アーネスト・クラインの原作は2041年が舞台でしたが、文化的には80年代が中心に描かれていました。そして、もしディストピア(反ユートピア)に陥ったら、人々は、一番安泰な時代に回帰したいという気持ちになると思いました。映画も、テレビも、音楽も、ファッションも含めて、文化が王様で、文化が素晴らしかった時代、非常に善良で穏やかだった時代に。

 

個人的には、80年代には私に最初の子どもが生まれました。またアンブリン・エンターテインメントを設立した時代でもあります。そして恋をしました(笑)。ですから、私にとっても80年代はとても重要な意味を持っています。そうした思いが今回の原作とぴったり合ったのです。

 

-以前「80年代はイノセントで楽観的な時代だった」と発言されていました。では、監督は、現代はどんな時代だと感じているのでしょうか。この映画のようなディストピアに向かっているとお思いでしょうか。

 

この映画はあくまでフィクションです。ディストピアに向かっているとは思いません。ただ、今はとても好奇心が強く、シニシズム(冷笑的)な時代だと思います。80年代と比べると、人が人を信用しなくなっています。そして今のアメリカは思想的にも半分に分かれ、信頼や信用がなくなってきています。この映画を作りたかった大きな理由の一つは、そうしたシニシズムから逃げたかったから。皆さんを、空想と希望のある世界にいざないたかったのです。


参照:【インタビュー】『レディ・プレイヤー1』スティーブン・スピルバーグ監督「皆さんを、空想と希望のある世界にいざないたかった」
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