◎ 「ファニーゲーム U.S.A.」2007年 
アメリカ・イギリス・フランス・オーストリア・ドイツ合作 
原題:FUNNY GAMES U.S./FUNNY GAMES
監督・脚本: ミヒャエル・ハネケ
出演者:ナオミ・ワッツ、ティム・ロス、マイケル・ピット、ブラディ・コーベット、デヴォン・ギアハート

 

変態的な性的嗜好を持つピアニストである中年女性が主人公の映画、「ピアニスト」を時々思い出す。『この映画の再度、見たいような見たくないような不思議な感覚はいったいどこからくるものなのか?』と。

 

特に映画作品として、優れているとは思えなかったし『この作品をいいと思うのは、相当に変わり者であろう』と思っていた。監督はミヒャエル・ハネケ。
ところが、彼の作る映画は世界的に認められている監督だということが、後々わかってきた。
「ピアニスト」も2001年のカンヌ国際映画祭にて審査委員グランプリ、男優賞、女優賞の3つ
を受賞している。

 

「シネコンウオーカー」というユナイテッドシネマ版の無料の映画紹介雑誌ではぼくは毎回、松久淳(まつひさ あつし)氏の書いている「地球は男で回っている」という映画エッセーを楽しみにしている。
3月号でのエッセーでは、ミヒャエル・ハネケ監督に関して書いている。その文章の中に書かれていたこの言葉に心が動かされた。

 

ハネケ、観客を不安と不快の空気に引きずり込む天才。「ファニーゲーム」で、その鬱すぎる
展開と、初めて見るタイオウの映画だったことに衝撃を受けたものです。未見の方はいますぐご覧になることをお勧めします。

          
ということで、すぐに松久氏の文章に勧められるままにファニーゲームを鑑賞した。
仲良くバカンスに来た夫婦と幼い子供一人に、「卵を貸してください」という青年が一人、現れたことから夫婦と子供三人が青年2人の言うところのゲームに参加され事件に巻き込まれていく。

 

暴力シーンで一番悲惨な場面として、両親が理由もなく暴力を振舞われている様子を子供が
見ていなければならない状態。
そのシーンが、ドラマの始まりで早々に出てくる。

 

夫婦の子供ジョージを演じるデヴォン・ギアハートは演技力が相当に高い子なのだろうけど、
演技を越して本当に恐怖で泣いているようにしか見えないので、こちらの気持がざわめく。
この時点でこの映画がどのような展開で進んでいくかが見えてきて、とても一気に見る気が失せてしまった。

 

結局、気を取り直して日を改め最後まで見たのだが、暴力の不快さを観客に体感させるということではこの映画は大成功といえるのだろう。また、他の映画のように『最後は何もかも解決して気持がスッキリして終わる』という形はとっておらず、それ故にずっしり心に残ってしまう。だからこそこの映画は、時の流れと共に消える作品とはならずに残っていくのであろう。

 

但しこの映画を観た後では、見知らぬ人が卵を借りにきたら、即、警察に電話してしまいそうだ。 特に若い二人組が来た時には・・・・・・。
これ、映画を観た人には納得してもらえるでしょう。     


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