◎「新仁義なき戦い 組長の首」  1975年 日本
監督: 深作 欣二
出演者:菅原文太、山崎努、梶芽衣子、成田三樹夫

 

17歳でのスクリーンデビューから70歳までを振り返る梶芽衣子の「真実」という本に、1975年の映画「新仁義なき戦い 組長の首」の撮影のことが書かれている。

梶芽衣子が組の幹部を演じた山崎勉の女房役・美沙子を演じた時の事。

 

撮影中に現場で倒れて、そのまま病院に運ばれてしまったことがあったという。後にも先にも撮影中に運ばれたのはこの一度きり。そこでの彼女の役割は菅原文太と美沙子の夫を演じた山崎勉の喧嘩に割って入るというもの。撮影はその1カットを残すのみという状況での事だった。

 

深作欣二(ふかさく きんじ)監督は、カメラの横に付きっきりで役者の演技を見ていて「間が悪いんだよ!」とか「さっきと違うだろ!」とか、思ったことを口にするので、俳優は気が休まる暇がない。ちょっとでもヘマをしようものなら「バカ野郎!」という言葉が飛んでくる。

 

スタッフも出演者も必死でストレスを感じる余裕すらなかったが、身体は正直だった。
梶芽衣子は現場で胃の辺りに強い痛みを感じたと思ったら、呼吸できないほどになってしまい気絶寸前となった。そばにいた山崎勉が彼女のところに飛んできて「あ、これは駄目。病院へ連れていく」と言って、彼女を抱きかかえてタクシーに乗せて病院まで運んでくれた。

 

気がついたときは次の朝で、彼女はホテルのベットの上だった。
三日くらい休んで現場に復帰すると、深作監督は「俺と仕事した人は一回は胃けいれんをやるのだよ」と言ったという。

 

そんなエピソードを読んでいるうちに、「新仁義なき戦い 組長の首 」を見たいと思い、DVDをレンタルしてきた。

 

ぼくはそんなにヤクザ映画が好きなほうではないので、途中で退屈するかもしれないと思い、
半分くらい見て、気が向いたらまた半分見ようと思っていた。しかし、見始めたら、一気に見てしまった。これは予想外に面白かった。

 

深作欣二のヤクザ映画に、はまる人は多いと聞く。この映画で描かれている世界は人間が欲にまみれて、とても泥くさく暴力的で面白い。

 

一番、ギラギラしていて元気のいい頃の菅原文太が生き生きと、流れ者ヤクザ黒田修次の役を演じていた。またその相棒役に、フォークシンガーの三上寛が「小林旭を名乗るギター流し」を演じている。映画の中で、顔に似合わずやけにセンチな歌を一曲、弾き語りで歌っているのが面白い。

 

ひし美ゆり子がいろんな男を渡り歩く情婦役で、付き合う男がみんな死んでしまうというキャラもいい。ウルトラセブンでアンヌ隊員の役をやっていたころは、正義の味方の役だったのに、まさにその頃からの大変身の役になっている。


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