◎ 「スリー・ビルボード」2017年 アメリカ
原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri
監督:マーティン・マクドナー
脚本:マーティン・マクドナー
出演者:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、ジョン・ホークス

 

最近、年配の女性が主役の映画が面白い。
「シェイプ・オブ・ウオーター」の主演女優サリー・ホーキンスは41歳だし、この映画もさらに高齢の60歳のフランシス・マクドーマンドが主人公が演じている。

 

ミズーリ州の小さな田舎町でのでき事。
娘をレイプ暴行事件で殺された母親(フランシス・マクドーマンド)は、事件が起きてから7ヶ月経っても犯人を逮捕出来ない警察に苛立ち、怠慢な捜査に対し、寂れ果てた道路脇の3枚の巨大な広告看板に掲げる行動に出る。
それの1枚目には「うちの娘はレイプされて焼き殺された」。
2枚目には「でも犯人は全く捕まっていない」。
3枚目には「ここの警察署長はいったい何をしているの?」と書いてある。

 

その広告看板を掲げたことにより、警察署長やその部下、そして町の人々からまで妨害に会うのだが、広告を取り下げようとしない彼女。やがてこの看板の広告が、静かな町を予想もしない大事件に巻き込んで行く・・・。

 

この映画を映画評論家の町山智浩氏が「この映画、もう最初に言っておくと、思ったことが、「こういう話になるのかな?」って思うと1分後には覆されて。またその1分後には覆されて……っていう感じで。わけの分からない方向にどんどん転がっていく映画なんですよ。」と、表現していた。

 

さらに「これはだから本当によくできた話でね。だから、アカデミー脚本賞をとるだろうと僕、思うんですよ。人は見た目とか言動だけじゃ判断できないんだよっていうことなんですね。」と。

 

但し脚本賞はベネチア国際映画祭で受賞したけど、アカデミー賞では取らなかった。それで、主演女優賞、助演男優賞の2部門をアカデミー賞で受賞した。
助演男優賞の方は、無能な差別主義者の警官を演じたサム・ロックウェルが受賞した。
フランシス・マクドーマンドは、過去に1996年の「ファーゴ」でもアカデミー主演女優賞を受賞している。

 

この映画を見て、色気にはいろんな要素があるということを考えた。何事にも引かないで前に出る勇ましい男には、色気があるものだが、それも女性からも発せられるものがあるということをこの映画が教えてくれた。年齢は関係のないことだ。

 

フランシス・マクドーマンドの演じる女性は、決して女性らしいキャラではないし、ある意味、無軌道に突き進むとんでもないキャラなのだが、それでもパワーがしぼんで意志を持たない女性よりは充分に魅力的なのだ。だから、その彼女に惚れた小人は映画では少し滑稽に描かれていたけれど、惚れる小人の恋心がそんなにおかしな事には感じなかった。

 

「スリー・ビルボード」のストーリーは、見ていない人の事を考えると、ほとんど詳細を語ることができない内容になっている。自分の予想した物語の運びをずらされる心地よさがこの映画にはあるからだ。

 

ところで、この映画は脚本もマーティン・マクドナー監督が兼ねている。監督自身が、ストーリーを考えているうちに、思ってもいない方向に向かったことをこのように語っている。

 

「本作はアイデアと主人公だけで書き始めたので、どんな展開になるか分からなかった。しかし書き進めるにつれ、それぞれのシーンが別の奇妙なシーンへと導いてくれたんだ。(警察署長)ウィロビー(ハレルソン)があんなことになるとは思わなかったし、(ウィロビーの部下)ディクソン(ロックウェル)にも驚いた。彼は物語の中で1番大きく変わるキャラクターだ。だがコメディやダークさは別として、根底にはずっと希望がある。それには撮影中も編集中も驚か
された」

 

また、本作の主人公ミルドレッドにはマクドーマンドを想定して書いたと明かし、「あんな演じ方は他の人にできない。ユーモアも悲劇も演じられる器用さがあって、労働者階級独特の感性も持っている」と絶賛している。

 

参照:マーティン・マクドナー監督、「スリー・ビルボード」は「自分史上最も希望に満ちた映画」

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