先週の週刊文春(2月15日号)に掲載された、奥さん、子どもを含め6人も殺害してしまった男の告白が、心に残った。

どんな理由があるにせよ、6人も殺害してしまったら死刑は逃れられないことであろうと思うが、男はなぜ自分の家族を次から次へと殺害するに至ったのか?

 

文春での本人の告白を読むと、妻の浮気への猜疑心が、犯人の小松博文(33)の心に火をつけてしまったと言える。
妻を子供を他人の男に渡したくないという想いが、妻と子供を殺害しなければならないほどに
思い詰めてしまうその底の深い絶望感が、読んでいてせつない。

 

殺害の現場は茨城県日立市の県営アパート。2017年10月6日、当時33歳の小松恵さんと、長女の夢妃(むうあ・11)ちゃん、長男で小1の幸虎(たから・7)くん、次男の龍煌(りゅうあ・5)くん、双子で三男の頼瑠(らいる・3)くんと四男の澪瑠(れいる・3)くんが殺害された。
連れ子で長女の夢妃(むうあ)ちゃん以外は4人が実子である。

 

小松と恵さんが出会ったのは八年前で、当時小松が通院していた茨城県の病院で、恵さんは働いていた。小松から声をかけ二人は知り合う。恵さんは前夫と離婚し、当時三歳だった夢妃(むうあ)ちゃんとアパートで暮らしていた。二か月後、小松がアパートに転がり込む形で同棲が始まった。

 

恵さんが病院の事務職として家計を支える一方で、小松は建築業や徐染作業員などの仕事がどれも長続きせず、2016年6月に運送会社を辞めてからはフラフラしていたという。

昨年4月、恵さんは昼の仕事と掛け持ちで、日立市内のスナックで働き始める。「夜の仕事には賛成ではなかったけど、自分が定職についていない手前、強くは言えませんでした」(小松)

女房に尻を叩かれる形で小松は本格的に仕事を探し始める。そして六月、市内の自動車修理工場に見習いとして就職した。

 

「九月三十日の土曜日は、長女と長男の小学校の運動会でした。ふと妻の携帯を見ると、スナックの客と思われるAという男とのLINEの通信があった。妻がお弁当の写メをAに送っていたんです。気になってさかのぼると、妻から『今日、昼に会いに行こうかな』とか、Aから『早くけりつけてね。待つと決めたから』などというやりとりがあった。」(小松)

 

浮気を疑った小松が恵さんを問い詰めると、「離婚したい」と告げられた。
思い余った小松は十月二日の夜、A氏との直接対決を試みる。「証拠になるかもしれないと思って、ドンキホーテで買ったICレコーダーを忍ばせました。

 

帰ってきたAはさほど驚いた様子もなく『最初は手を出そうと思ったけど、旦那がいるって
聞いたから出してないよ』などと飄々と言い、自分が暴力団関係者のようなことを匂わせてきたんです」

 

A氏は、建設関係の仕事をする四十代の男性で、暴力団関係者の件に関しては「でも俺は『暴力団だ』とかは言っていない。兄貴って呼んでいる人がいて、たまたまその人と電話していたから、勝手にそう思ったんじゃないの?」と、語っている。

 

恵さんは、件の男に結婚していて子供もいることを打ち明けているが、2人とも体の関係はないと言っている。1度はその男と縁を切るなら離婚に応じると、小松は同意した。だが、恵さんの心はその男から離れない。そうやって、小松は疑心暗鬼になり、ついには自殺しようか、「みんななくしちゃおうか」と、踏ん切りがつかない。

 

再び話し合いがされ、ついには離婚届けを出すという結論が出た日の前日、小松は凶器とガソリンを買いその日、小松は子供たちにプレゼントを贈っている。

 

長女には好きなメーカーの服を二着。長男にはニンテンドーDS「マリオカート」のソフト。次男には消防車のおもちゃ。双子にはお揃いの、はとバスのおもちゃ。どれも子供たちが前からほしがっていた物だったという。

 

風呂から上がった恵さんが床に就くと、小松は六人が寝ている寝室の隣のリビングに敷いた布団の上に座り、じっと考えていた。電器は消し、テレビをつけたままで「どうする、どうすると、自分への問いかけがぐるぐる回っていた。色んな思いが降っては消えていた。そうしているうちに朝のニュースが始まりテレビに目をやると4時39分だった。


「時間がねえ、長男が起きちゃう」小松は包丁を手に寝室に向かった。

  「自分の心臓の音が近所に聞こえるんじゃないかと思うくらい大きかった。身体がこんな
に震えるのかと思うくらい激しく震えた。寝ている妻に近づいて、布団の上から一刺し......し
ました。その時、妻が長女の名前を呼んだんです。『ムー』って。その声を聞いて余計に焦った。無我夢中で刺した......それから長女の方に向かって行き、包丁を落とした・・・・と思います」

 

朝五時五分、足にやけどを負い、ズボンを脱ぎ捨てパンツ姿で日立署へ駆け込んだ小松は、
泣きながら「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返していたという。

「正直、死刑は恐ろしいです。でもそれしか道はないのも分かっています。恵の両親、ご遺族には本当に申し訳なく思っています。何をしたら償いになるのか、どうすれば償えるのか、ずっと自問自答していくと思います」(小松)

 

参照:週刊文春2018年2月15日号

    元木昌彦の深読み週刊誌:死刑が恐ろしいとはあまりにも身勝手な

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