◎ 「女神の見えざる手」 2016年 アメリカ
原題:Miss Sloane
監督:ジョン・マッデン
出演者:ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング、ググ・バサ=ロー、アリソン・ピル
昨年の10月、ラスベガスで発生した事件で、ホテルの32階のスイートからマシンガンで、カントリー・ミュージックフェスティバル会場に向けて自動式の銃を数千発砲、58人が死亡、546人が負傷した事件があった。犯人のスティーブン・パドックは警官が到着したときには自害していたというが、このような事件があっても銃規制にはつながらない。
NRA(全米ライフル協会)は「頭のおかしい人物の行動によって、法を順守するアメリカ人が銃を所有する権利を侵害してはならない」と述べたという。
まさしくアメリカで怖いのはだれでも銃を簡単に手にすることができること。
だから、映画「女神の見えざる手」の主人公の女性エリザベス・スローンのように、銃所持を後押しする仕事を断って、その悪習を正そうと活動するのは、ある意味で正義の味方だ。でも映画は単純に悪と善の対比で終わらせずに、そこを一ひねりしている。
その女性の職業はロビイスト、あまりなじみのない職業ではあるが、巨額のお金を動かして
政治を情報操作により陰で動かす。スローンは、男性優位の社会にあって媚びず甘えず、強靭な信念で職務を全うする。
またスローンは仕事が忙しすぎて恋愛などしているひまがない。だからお金で男性を一晩、買っている。まるでゴルゴ13の女版のような生き方だ。
スローンは慢性の不眠症で睡眠薬を使っているだけでなく、眠気を覚ますために精神刺激薬も常用して、つねに何かに追われるかのように仕事をしている。目的を達成する為に周りもだまし、仕事仲間にも嫌われて孤独に陥る。
しかし最後にあっと驚く展開がある。これはひさびさに面白い映画だった。
去年、見た映画の中で一番面白かった。こうゆうすばらしい映画が、去年は東京では2,3の映画館でしかやっていなくて、ぼくの住む埼玉では上映館がみつからなかった。全国で展開する映画にもつまらないものも多いので、評判のいい映画に関しては多くの映画館で上映できるようにしてもらいたいものだ。
この映画に関する想いは、ぼくだけではなくて国内最大級の映画レビューサービス「Filmarks(フィルマークス)」の「10月第3週公開映画の初日満足度ランキング」(10月23日発表)で第1位を獲得している。
