ネットで記事のタイトルを見て、これは「うまい!」と思った。
「AV女優をめぐる日常を描く『最低。』は最高の出来だった!」

 

『1980年代初頭からのホームビデオの普及に伴い、世にアダルトビデオが登場してから40年近く経つ』との出だしで増當竜也氏の記事がニコニコニュースにアップされている。

 

映画は、紗倉まなさんが記した小説『最低。』を原作として11月25日から上映されている。

どこで上映しているかぼくは、思わず検索してしまった。逆にこれが、タイトルと同じで映画の内容も最低だったら、目もあてられないところだが・・・・・。

 

映画「最低。」は、AVに出演する女性たちと、それを知る家族の葛藤を描いている。平凡な日常から新しい世界へ足を踏み入れる主婦、母との確執を抱える人気AV女優、出生に秘密を抱えた女子高校生の3人が、自らの人生を変える様を描く。

 

瀬々敬久(ぜぜたかひさ)監督は「性愛表現のありようを総合的に撮ってみたいと思った」と語る。また、「『最低。』のメガホンをとるのにあたり、「AV女優さんの闇はよく分かりません。ただ紗倉まなさんの原作が、そこに光を当てたものではなく、家族や夫、友人、そういう普通の関係の中で必死に生きようとするAV女優たちが描かれていたのに惹かれました」とコメントしている。

 

瀬々敬久監督は『64 ロクヨン』前後篇や、今年も最新作『8年越しの花嫁』などが話題となっている実力充分の才人。90年代前半は”ピンク四天王”のひとりとも称され、さまざまな傑作を発表した。ちなみに、四天王とされるのは、佐藤寿保、サトウトシキ、瀬々敬久、佐野和宏の4人である。

 

紗倉まなさんは、映画『最低。』の記者会見で、「この作品の一つの意図として、AV業界で働く人々へのスティグマ(偏見・負の烙印)をなくしたいという意図はありましたか?」
と質問された紗倉は、「もともとそういう気持ちはずっと思い続けて、いまもそういう自分は仕事をしているということもあるので、ずっと偏見はなくなればいいなと思っていたんですけれども、ある種AV女優も普通の一人の女の子なので、年間1000人以上の方がAVデビューしていると言われてるんですけれども、それだけいるということは、やはりそれだけの女の子の普通の日常もあるということで、そこを描けたらいいなという思いで本は書かせていただきました」と答えている。

 

映画を観る前に、紗倉まなさんの小説『最低。』を読んでみた。文章はうまい。AV女優が小説を書いたという話題だけの本ではない。但し、小説の舞台が限定され、世界が閉ざされている息苦しさが内容のどこかに常に潜み、そこがぼくには重かった。

ストーリーの中にもう少し笑いがあったら・・・・という気もした。

 

但し、「あとがき」と称したエッセイがやたらに面白かった。彼女は小説よりエッセイタイプの人なのではないかと思った。

紗倉まなさんは、工業高等専門学校に通っていたころに、友人から一冊の本を渡される。
桜庭一樹さんの『少女七竈と七人の可愛そうな大人』(しょうじょななかまどとしちにんのかわいそうなおとな)という本だった。
それをこのように描いている。

 

これさ、すごくあなたらしいと思ったんだよね。ずっと渡したかったんだよね。
私は、一ページ目をめくる。

―― 辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。
『少女七竈と七人の可愛そうな大人』は、この一文から始まった。

 

それが私の、きちんとした、明確な意志をもっての「本との出会い」だった。私は、確かに「私らしい本」というものを渡してもらうことがはじめてだった。小さい頃、親や教師から渡された本は、いつか授業に役立つから、子供はこういうのを読んどいたほうがいいから、という万人受けの理由と親切心で渡されるものばかりだった。

 

私は、帰ってから、引き込まれるようにページをめくり続けた。言葉の洪水が、言葉が帯びた熱と色味がどうっと頭の中にあふれ出して、夢をみるように違う世界が動き始めた。そこで、気づく。あぁ、本が好き、と思える気持ちと、国語の授業をおもしろいと楽しめる感覚は、私が今感じているこの「言葉の抱擁」と、なにかこれ、通じるのではないだろうか。これは間違いなく、「出会い」なのではないだろうか。

 

これは、彼女のあとがきのエッセーのほんの一部だけれど、初めて自分の感性にピッタリ合った本を読んでの感動がこちらに伝わってくる。14ページのエッセーをぼくは4章まである小説のどれよりも面白く読めた。

 

何にせよ、今度は映画『最低。』を見たあとに、また感想を述べたい。

 

参照:AV女優をめぐる日常を描く『最低。』は最高の出来だった!

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