◎ 「ブレードランナー 2049」2017年 アメリカ
原題:Blade Runner 2049
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
出演者:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス

 

橋本愛が通ったという東京・新橋のポルノ映画館である「新橋ロマン劇場」は、
今はもう閉館してしまった。そのすぐ隣の同じ新橋駅ガード下の場所に名画座
の「新橋文化劇場」があった。ここも今はもうない。
映画を観たいと思って新橋で降りたときは、名画座に入るべきか、ポルノ映画
館にするべきかずいぶん迷ったものだ。

名画座「新橋文化劇場」は画面も小さく、劇場も古かった。さらにガード下の
為、電車が通るとガタガタ揺れてゴーという音が鳴り響き「電車が今、通った
んだ。」と認識させられるそんな映画館だった。
いいところといえば、入場料が安かった事で、確か2本だてで上映していた。

ぼくはその名画座で1982年に創られた「ブレードランナー」に出会った。
映画が始まって、数分で劇場の古さも電車の音もぼくの意識から、消えてし

まった。映画の画面を凝視していた。自分の感性に訴えてくるところが多すぎ

て、ブレードランナーの世界に衝撃を受けていた。
その映画との出会いは、夢の中を漂っているかのような体験だった。

続編の「ブレードランナー 2049」が35年ぶりにできたというので、これは
観ないわけにはいかないと思い喜び勇んで観に行った。
出だしは、良かった。あのスピナー(飛行自動車)が、広大な空間を飛んで

いるシーンから始まり、映像は刺激的でアートとしても感じるものがあった。

ライアン・ゴズリング演じるKと食用虫を飼育するレプリカント(人造人間)

との戦いのシーンも迫力があった。

世界観はよくできていたし、音楽も迫力があった。前作を大きく超えるものは

ないが、前作のイメージを踏まえてそれを発展させたアートを融合させた街を

描いていた。
しかし、ぼくはだんだん退屈を感じていた

その退屈はいくつか原因があるが、大きく以下三点にあると思った。

1つめは、女優が前作よりしょぼい事。
前作でのレイチェル(ショーン・ヤング)の神秘的な優雅な美しさを感じさせる
女優が今回は出ていない。それを補うかのように、レイチェルがよみがえり、
CG映像で出演しているが、時間的に短かくて、まるでおまけのような印象。
前作におんぶせずに、同じくらい魅力的な女優とキャラを創出してほしかっ

た。あと前作ではバク転や、苦しんで死ぬ様子まで綺麗だったレプリカント

「プリス」を演じたダリル・ハンナも強烈な印象を残した。彼女に匹敵する女優

も今回はいない。

2つめは、続編は哲学的なメッセージを込めていて、内容は深いというが、

ぼくにはそのメッセージが伝わらなかった。
そもそも同じ監督.ドゥニ・ヴィルヌーヴのSF映画の傑作と言われる「メッセー
ジ」が、退屈だと思ったくらいだから、ぼくには根本的に会わないのだろうか。

3つめは、前作のような強烈な個性を持った敵が出ていないことだ。
ラストでハリソン・フォードと戦うルドガー・ハウアーは、ハガネのような強さ
をかんじさせ、さらにレプリカントの哀愁を感じさせた。二人の格闘シーンは
お互いに鬼気迫る名演技だった。

とはいうものの、不思議なことにほとんど今回の「ブレードランナー 2049」を
観た人は高評価をつけている。
もし、前作を観ずに今回の作品だけで、面白さを感じた人はぜひオリジナル

の前作もみてほしいとぼくは思う。


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